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最強の引きこもり聖域(お布団)の完成

――ここに、一つの『絶対聖域』が完成した。


一ノ宮総本山の最奥、特別総帥室。


 シルクのシーツに包まれたふかふかのお布団の中で、俺――ひじりは、淹れたての白湯をすすりながら、至高の幸福感に浸っていた。


「完璧だ……。これ以上ないほど、俺の理想とする人生が完成してしまった……」


元デパ地下の派遣社員として、毎日クレーマーに頭を下げ、エリアマネージャーに数字で詰められ、サビ残に追われていた前世の暗黒日々が、まるで嘘のようだ。


現在の俺のステータスは以下の通りである。


役職:全国23区統括総クラン『一ノ宮総本山』最高総帥。


 実務:ゼロ(全てカレンさんたち優秀な部下が『総帥の手を煩わせるな』と徹夜で処理してくれる)。

 税金:完全非課税(クラン最高権力者の特権)。


 セキリュティ:鉄壁(受付の『クレーマー対応マニュアル』があまりにも優秀すぎて、他区の偉い人たちが『総帥の逆鱗に触れると一瞬で組織が滅ぶ』と勝手に震え上がり、誰もこの部屋に近づこうとすらしない)。


そう、俺は一歩もお布団から出ることなく、ただ白湯を飲んでゴロゴロしているだけで、一生遊んで暮らせるだけの上質なお布施(不労所得)が全国から自動的に口座に振り込まれるという、神をも恐れぬ『最強の引きこもりライフ』を確立してしまったのだ。


「書類対応の徹底と、カレーの在庫切れ報告がこれほど劇的に効くとはな。やっぱり、前世のブラック企業で培ったリスクマネジメントは異世界(※ただの他区クラン)でも無敵の防衛陣だったわけだ。みんな俺の事務的な冷たさに呆れて、綺麗さっぱり去っていってくれたよ」


ひじりは、自分が「言葉を交わす価値すら与えない冷酷な覇王」「一言で巨大クランを私兵化するスパイスの魔術師」として、国家の歴史書に刻まれるレベルで神格化されていることなど、未だに1ミリも気づいていなかった。


――その頃、総帥室の分厚い扉の外では。


「……カレン殿、これが今月全国から集まった『お布施』と『貢ぎ物』の最終目録だ」


ジークリンデが、震える手で国家予算の数倍に達する資産目録をカレンに手渡していた。


 そこには、2区の武闘派クラン、5区の魔力結晶流通権、11区の最強護衛団三千名をはじめ、ひじりの『鉄壁の拒絶陣』に恐怖したすべての区のトップたちが「どうかこれを受け取って我が区を滅ぼさないでください」と涙ながらに差し出してきた全財産が並んでいた。


カレンは、総帥室の扉に向かって深く、深く頭を下げ、恍惚の涙を流した。


「ああ……ひじり様。一歩も部屋から出ず、指一本動かさず、ただ『書類を数年待て』と紙切れ一枚を突きつけただけで、この国のすべての富と権力を玉座の前に平伏させてしまわれるとは……。これほど優雅で、これほど冷徹な世界統一が、かつてあったでしょうか……!」


「まさに絶対覇王。いや、我らの『唯一神』だな。これほどのお力を持ちながら、手に入れた富や権力には目もくれず、ただ静かに白湯を飲んで世界の行く末を見守っていらっしゃる……。その無欲さと底知れぬ器の大きさに、私は一生ついていくと誓うぞ」


ジークリンデもまた、畏敬の念で胸を熱くしていた。


 彼女たち部下の中では、ひじりは「世界の全てを支配しながら、あえてお布団の中から動かない、超越した神」として完全にロックオンされていた。


そんな部下たちの狂信的な視線など露知らず、ひじりはお布団の中でスマホをいじっていた。


「よし、明日は全国から届いた最高級の高級ハムを使って、前世のこだわり趣味だった『自家製スモークチーズと極上ベーコン』でも作ってみるか。あ、でも、あんまり匂いをさせるとカレンさんたちが『新しい国家戦略ですか!?』って騒ぎそうだから、コッソリ静かにやらないとな!」


どこまでも小市民な趣味を満喫しながら、ひじり君は幸せそうにお布団に潜り込む。


 勘違いが世界を救い、気づけば頂点へ。


 実務ゼロ、完全非課税の最強引きこもり聖域の玉座で、ひじり総帥は今日も優雅に微笑むのだった。




ひじり君の「ゴロゴロしたい」という小市民な願いが、前世のデパ地下スキルと周囲のバグった超解釈によって、国家を揺るがす最強の不労所得聖域として完成してしまいました(笑)

本日の更新をもちまして、

「男女比1:50の世界に転生した俺、普通に過ごしているだけなのに聖母と崇められて国が大騒ぎです ~前世がデパ地下派遣の小市民、息をするように感謝したら世界を救う聖母(神)扱いされました~」

は連載終了でしたが、書き足しました。(6月14日現在)



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