四日目 猫被って仕事して?
「⸺はい、確認いたしました。それでは、こちらをお渡しいたします。Cランクダンジョン『灯下の館』への入出場許可証となります。発行から一週間の有効期限となりますので、お気をつけて下さい」
「いつもありがとうね、リンちゃん。新人さんなのに凄い手際で、先輩たちもさぞ喜んでいるんじゃない?」
「いえ、仕事ですので。それより! 綺月さんの方こそ、いつもソロで潜っているのに大きな怪我無く……凄いです!」
「あはは……それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ! ………ふぅ」
少し心配で見に来ましたが、どうやら上手く猫を被れているようですね。
「⸺…………っち」
おや、バレてしまいましたか。仕方ありませんね。折角ですので、彼女から依頼を受注しますか。
「こんにちは、”リン”さん。お仕事の調子はどうですか?」
「あ”……あらコンニチハ。え、えぇ。紹介状を書いてもらったお陰で、少しの研修だけで受付に任命されました………脱いでいいか?」
「やめなさい。仕事中でしょう?」
「………で、なんの御用でしょうか」
あんなお転婆でも、政府関係者の娘ですから、流石の仮面ぶりです。少々剥がれかけているのと、思いっきり剥ぎ捨てようとしているところに気に掛けておきませんとですが。
「数日、休暇を取りましてね。今週中にでもマークに会いに行こうかと思いまして。あちらの方の入場許可証を発行できますか?」
「………戦うのか?」
「いえいえ。話し合いのつもりですよ。少なくとも、私は」
「私も行ければ良かったんだが……流石に海外じゃバレるよな」
「えぇ。貴女は大人しく、受付業をお願いします」
「分かった……Aランクの『悠遠の園』でよろしいですよね?」
「はい、其方でお願い致します」
見事な手際ですね。私と話している合間に、万が一話し合いで終わらなかった場合の事を考えて、人が少なく、且つ修復機能が備わっているダンジョンへの発行手続きを済ませる。
再びの家出で、行き場を探していた彼女を万年人手不足の受付にスカウトして良かったです。これでこの支部と周辺の腐りは粗方落とせそうですし。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「………アイツに会ったら、今度飲もうって言ってくれるか?」
「…分かりました」
先日再開した時より、大人しくなりましたね。彼女なりに、色々と考えたんでしょうか……あの事について、私は口を挟む権利はありません。表面上では昔のようですが、胸の内ではきっと、生まれに似合わぬ罵詈雑言で溢れているでしょうから。
「では、お仕事頑張って下さい。リンさん」
「⸺! ……そちらこそ、検討を祈ります。朱実千様」




