三日目 焦りは舞台上から落ちる行為を誘発させる
「ぁ”……あ”ぁ…」
スポットライトが当たり、世間に輝く者がいる一方。大きく、されど当たり前として人々の目と耳から流される。
⸺それは、攻略者の死亡。
「そ”れ……だけ、は”……」
それだけは。そこにだけは、名前を残したく無かった。なのに、今のこの状況は……。
焦っていた自覚はある。五十代になっても、中堅と言われるランクにすら成れず、Eランク止まり。規約違反をしてまで、一人でDランクダンジョンに潜ったものの、一階層のゴブリン一体相手に苦戦し惨敗。たった一ランクの差だというのに、雑魚に分類されるゴブリン一体にこの体たらく。
「(………私は、もう)」
声も出せない。寧ろ、ここまで意識を保っているだけ素晴らしいと言うべきか。ゴブリンに惨敗した後、あのゴブリンは私を弄んだ。手足をあらぬ方向に折ったり、棍棒で叩きのめしたり……去り際には、排泄もされた。無様以外の何モノでもないな。
もしも今ここに、他の攻略者が来たとして。私のこの状態を治せるとは思えない。そして更に、私のこの状態を治せる凄腕が、Dランクダンジョンに来るとは思えない。
『もしも君が死んだら、私は死霊術師として君の身体と魂を有効利用させてもらうよ。飲み友としてのよしみでね』
ふと、私よりも遥かに若いのに最近Cランクに上がった、いつも顔色の悪い飲み仲間の言葉を思い出した。
ははっ……それならもしかしたら、死んだ後でも名を残せるかもしれないな。そんな事があれば、だが……な…意識が、遠く……なって…………⸺。
「⸺やっぱり居たね。まだ魂は身体にあるから、死んでは無さそうだけど、助か……るとは思えないね。部位欠損レベルの回復薬なんて持ってないし………飲みの席の、冗談だったんだけどな」
終いには……幻聴、まで………。
「【死霊術:魂のランタン】……それと、【死霊術:死体格納庫】………これで、今までの奢り分はチャラにならないかな?」




