七日目 解ける日
「こんにちは〜! リュウドウさんいるー?」
今日もまた、見知らぬ客が来店する。妙にキャピキャピとした男だ。あまり関わりたくないタイプの。
リュウドウなら仕入れに行っていると言うと、男はスンとして店内を見て回る………何だコイツ。
「お。へぇ〜………コレ、売り物?」
男が指を指す先を見ると、先日見つけた日記だった。一応は売り物だと答えると男は中を開きパラパラとページを捲る。
数分、紙の音だけが響く。パタリと閉じる音が聞こえたと思うと、男に名を問われた。何故と聞くと、男は誇らしそうにこう答えた。
「俺はリュウドウとは旧知の仲でね。君を雇ったって事は聞いたんだが、名前は聞いていなかったんだ。聞いてもいいかい?」
まぁ、名前くらい今更だろうと思い名乗ると同時に、男の名も問う。一方だけが知っているのは違うだろう。すると男は、納得という表情を浮かべ、僕の目を真っ直ぐと見つめる。
「俺の名はノウェンだ。ふむ……⸺なるほどな。流れ者が解いて物資を強奪、それらの痕跡を消し……と、そんな所かな。杜撰すぎて、幻覚と以前の記憶にまで影響してるみたいだけど」
この男は、何を言っているのだろう? 確かに、魔法の様な物は実在するだろう事はこの店で働いて知った。だが僕に対して言うなど、おかしいのでは無いか?
「……折角だから、解いてあげるよ。こんな素敵な生きた証、もとい、この世界の終わりを直面した一人の人間の記録を見せてもらった礼だよ」
そう言うと、ノウェンはパチリと指を鳴らす。一瞬、視界が揺らめいた。今、何をしたんだ…?
「念の為、ゆっくり解けるようにしたから、暫くは重なって見えて大変だと思うから……まぁ、頑張りな」
……? 話が見えないな。だがまぁ、いずれ分かることなのだろう。
僕も店員だ。ノウェンに買う品が無いのか聞くと、思い出したかの様に店内を見回し、手に持っていた日記を元に戻した後、幾つかの商品を持ってくる。
「ベウィクド=フロッグの粘液と晶銀の粉末……あ、いいじゃないかコレ。この鬼神の酒瓢箪を買おうかな。幾らだい?」
レジ作業など最早慣れた物だが、ノウェンも凄い。天井から吊り下げていた瓢箪を見て、品名をスラリと言っている。しかも、レジに通すとノウェンが言った名と同じだ。リュウドウのとは似た者同士なのかもしれないな。
「会計は……あぁ、やっぱり百万は超えるか。まぁでも、安い方だね。はい、コレで全額かな?」
確認すると、丁度。しかも日本円か、久し振りに見た………久し振りに? いつも使っていなかったか???
頭の中が疑問で埋め尽くされる。
「それじゃ、今日の所は失礼するよ。久々にリュウドウと話したかったんだけど、いないんなら仕方ない」
そう言って扉を開けて帰るノウェンを見ると、いつもの路地裏……⸺に重なり、植物すら生えていない荒野が見えた。あ……?
「それじゃあ澪君、問い詰めるなら龍道にね〜!」
扉が閉まると同時に、僕の頭の中に覚えのある記憶が溢れ出した。




