六日目 世界の過去……?
「……これ、なんだ?」
倉庫の掃除をリュウドウから任されたのでしていると、妙に目を引く本を見つけた。手にとって表紙を見るも、何も書かれていない。内容が気になり、本を開き中を見てみる。
「⸺東暦34XX。およそ千年前に予見されていた事が、現実となった。我々人間は互いを信じず十をも超える大戦を繰り広げ、この地に人工以外の自然が消えてしまった。最早、この星に残る自然は土と石塊、そこに眠る生物の種くらいな物だろう。各国に築かれた防衛都市はそれぞれ問題を抱え、内部からの崩壊は目に見えている」
何だこれ、何かの物語か? そろそろ掃除を終わらせねぇといけねぇから、表に戻ってから続きを見るか。
*
「最終戦争の余波によって月が割れ、日が経つ速度も速まった。海洋生物はもう殆ど生きていないだろう。幸運なのか、酸素自体に影響は無かった。学者たちも首を傾げていたが、私はコレを、神が与えた人類が反省する時間を作ったとしておく。そうしておいた方が、気が楽だからな……ふーん」
客が来ないことを良いことに、思う存分読書を続ける。読書なんて、いつ振りだろうか……あぁいや、先日友と共に漫画は読んだか。……読んだのだったか?
「まぁ、いいか。……死を待つだけの人間に、何も出来ることは無い。しかし親として、我が子がただ死を迎える事だけは、認めたく無かった。お飾りといえど、一都市の管理者を担当していた私は、権力を使って学者を集めコールドスリープが出来ないのか。出来るなら、今都市に残る技術者と未成年はどれだけいるのかを調べて欲しいと命を出した。それが、五年前……⸺あ、客が来たのか」
続きが気になるが、接客の方が大事だからな。因みに今日の客は黒装束を身に着けた、アサシン系の男だった。変なヤツだったな。
「さて、続きだな。……⸺今現在、この都市に残る子供は十にも満たず、技術者も二、三人しか残らなかった。疫病が流行ったり、食糧不足になったりと色々な事があったからだ。彼らがコールドスリープ中に死ぬ可能性がある事も重々承知している。だが、希望に思いたいのだ……我が子が遥かな未来で生きている、という事を」
なんて言うんだっけな……あぁ、そうだ。親バカだ親バカ。ていうか、コレもしかしなくても日記……というか、最後に書いたみたいなヤツか? まぁ、どうでもいいけど。
「⸺最後に。我が子、■■よ。父と名乗る勇気が無く、ずっと支援しかしてこなかった愚か者を父と思わなくて構わない。だからせめて……長く生きて、私の事を忘れないでほしい」
あぁコレ、自分の子に当ててたのか。幾つくらいなんだろうな、子供は。これが事実だったら、もう数万年は過去かもな。幾つか疑問はあるが、月は何事も無く浮いているし、人間は多少平和に生きている。
子の名前だけ読めないのは残念だが、中々面白い本だったな。人の人生をまた一つ知れた。
コレは……売り棚に置いておくか。奇特な客ばっかりだから、誰かしら買うだろ。
***
「いつの間に紛れ込んどったんじゃ、この本は……まぁ、オーナーか弟子殿の仕業じゃろうな。そうじゃなきゃ、アヤツが見つける位置に置かれておらんじゃろ。………知らぬが仏とは言うが、無知は罪とも言うんじゃよなぁ」
⸺太陽だけが、変わらずに地を見続けている。




