二日目 初めての接客
ミオが万点堂で働き始めて一月余り。彼は……⸺暇を持て余していた。
仕方がないといえば仕方がない。万点堂に来る客は大半が常連の怪しい連中ばかりだが、そんな連中は真夜中に来店することが多く、ミオが働く昼間の時間は新規客以外は来ない。
そんな訳で、碌に接客も無く日々の軽い掃除と商品チェックばかりの毎日にミオ自身、飽きが来ていた頃。待ちわびていた来客が来た。
ミオの初めての客は、黒いローブで顔を隠した子供だった。ローブを引きずっており、歩き難そうだと思いながらも、欲しいものがあるのか問うた。すると子供は、外見に似合わぬ口調でこう答えた。
「⸺”アマザカナの干物”が此処にあると聞いてな。在庫はあるかの? ⸺あぁ、量はさほど要らん。此処の品の信憑性を知りたいだけゆえ、一つあれば充分じゃ」
ミオはタブレットから商品一覧を確認し、子供の探し物である「アマザカナの干物」とやらの在庫がまだあることと、店の奥に保管してあることを確認した。
子供に暫し待てと告げ、ミオは店の奥へと引っ込む。分の針が数度動いた頃、注文の品はコレかと持って来たのは真空パックに入れられた切り身魚の干物。知らぬ者ならただのツマミと見まごう品だ。
「ほう……それじゃそれ。小童にしてはやるでは無いか。そんで、幾らじゃ?」
注文通りの品を持ってこれた事で安心の表情をしていたミオだが、いくらと問われてハッとし、タブレットに商品を写す。すると、タブレット上に代金が表示される。
ミオには見覚えのない字で書かれていたが、子供には伝わった。カルトンの中に金で出来た硬貨らしきモノが五枚入れられた事でミオも子供には伝わったことを察する。
「金貨五枚とは……昔の相場よりも上がったのもしれん。人の世は停滞を知らぬからな」
そう呟きながら、子供は店を出ていった。




