11/12
死ななかった理由
観測者が、初めて姿を“完全に”現した。
仮面が、ひび割れている。
声も、一定じゃない。
【質問】
【なぜ、お前は死ななかった】
俺は答える。
「運が良かった」
【否定】
「臆病だった」
【否定】
「……死が、怖かった」
沈黙。
【解析結果】
【恐怖は、本来“回避”を選ばせる】
【本システムでは】
【恐怖は、無視される前提】
理解した。
この世界は、
“恐怖を持たない者”を前提に設計されている。
死に戻りがあるから。
失敗が資源になるから。
だから――
恐怖を理由に立ち止まる存在は、
想定されていない。
「俺は、
システム外だったんだな」
【……】
初めて、
観測者が言葉に詰まった。
【結論】
【お前は、失敗】
英雄が、怒鳴る。
「ふざけるな!
こいつは――」
俺は、首を振る。
「いい」
そして、言った。
「失敗でいい」
失敗だからこそ、
ここまで来た。




