再度の襲撃――「旅の仲間たちとの再会
自宅に帰ったフウカは、暴漢たちに襲われたことを滝子に話した。
「危ないところを助けてくれてありがとうね」
滝子はリンコに感謝の言葉を伝えた。
「いいえ、これが私の役目ですので」
おもはがゆそうな顔で、答える。
「それにしてもリンは、ホントに強かったよ。
あっと言う間に暴漢たちをのしてしまったんだから」
フウカは、リンコの活躍を興奮気味に語った。
「……今回は奴らも、私たちを甘く見ていました。ですから撃退することができましたが、次は、そうもいかないでしょう。多人数で襲われれば、かないません」
リンコは、楽観視していなかった。どうやって向かい合うか考えあぐねているようであった。
「リンには仲良しのお友だちがいるようだから、大丈夫じゃないかしら」
滝子が、フフッと笑いながら言った。
「……?」
リンコとフウカは、キョトンとしてしまった。根拠がわからない。滝子は、適当なことを言う人間ではなかった。
その後、二階へ上がってリンコは、フウカの部屋に入る。
「リン、これを預けておく。武器が必要でしょ。使えそうかな?」
そう言いながら、ある物を取り出してきて渡した。
長さ八〇センチ弱の金属製の棒だった。両端には、黒いゴムキャップがはまっている。警備員が、暴漢を制圧するときに使うものだ。
「キャキン!」
リンコは、両手で端を持って引き延ばす。すると、倍の長さとなった。片手で、軽く振ってみる。見た目よりは軽い。
「カイトから渡された如意棒だよ。マオが表に現れたとき、使っていたんだ」
そう説明されたが、何のことか分からない。とはいえ分からないことだらけなので、素直に受け取っておくことにした。
「使えそう?」
「うん、いちおう使えるよ。習ってはいる」
リンコの流派は実践的な古武術なので、ヌンチャクなどの武具も使う。棒術も、その一環として習ってはいた。今後、武器無しで闘うのは苦しいと思っていたところだった。
如意棒を使う機会は、すぐにやってきた。
翌日、ユウコが「みんなで期末テストの勉強をしよう」と、提案した。部活は終わっているので、クラスの女子たちの多くが賛成した。賛同者たちはリンコのファンたちで、少しでも仲良くなりたいという下心があったようだ。
タイミング的には良い提案なので、フウカも逆らえなかった。さっそく担任教師の許可を得て、居残り学習をすることになった。
その次の日、ワイワイガヤガヤと騒がしい勉強会がおこなわれた。案の定、おしゃべり会といったような様相であった。
終ったときには、やはり陽が暮れてしまっていた。校門を出たときからリンコは、周囲に気を配り、警戒を怠らない。
前回の襲撃地点に差し掛かった。年末というのに不思議と人通りがない。
辺りの気配が、変わった。ザザッと男たちが走り出てきた。無言で、二人を囲む。酔っぱらいを装うこともなかった。半グレだけでなく本職のヤクザも加わっているようだ。手に手に鉄パイプやバット、石、短刀、網、鎖などを持っている。十五人ほどだろうか。
(マズイな……)
そう思いながらず腰のベルトから如意棒を抜いて伸ばし、身構える。
間を置かず二人が、鉄パイプとバットを振り上げて、飛び掛かってきた。リンコは、目にも留まらぬ速さで武器を弾き飛ばす。その勢いのまま、敵の腹を突いた。
その間にフウカは、木陰に隠れた。拳大の石が、バラバラとリンコに投げつけられている。彼女は、それを巧みにかわし、または打ち落としながら身をかがめ、端の男のところへ走り寄り、棒で脚を一撃する。隣の者も反転して旋回する棒に打たれ、倒れる。拳で顎を突き上げ、股間を蹴り悶絶させる。跳ね飛んで真正面から打ち下ろし、脳天を打ち割る。立ち止まらずに連続技を見舞っていった。
リンコが立ち止まり、簿を後ろへ回してスタートダッシュのときのような姿勢を取ったときには六人の男が、地面に転がって、うめき声を挙げていた。
フウカは、思わず歓声を挙げそうになった。次の瞬間、ガッと羽交い絞めにされた。身動きができない。叫び声も出ない。そのまま、吊り上げられるようにして前に引き出された。
「おい、こっちを見ろ!」
背後の男は、リンコに向かって言った。彼女が、振り向く。
「キヤァァァーー、やめて! 痛い痛い」
「へへへッ」
フウカの胸が両手で、揉みしだかれていた。卑猥な声が、後ろから聞こえる。
「止めろォォォ!」
動揺したリンコが叫ぶ。気が逸れた。
袋に入った目つぶしの粉が、彼女に投げつけられる。
「グッㇷ!」
片手で目を覆い、片膝をついて、うずくまった。
「やれ!」
ボスらしき男が、残りの襲撃者たちに命じた。
勢いを取り戻した者たちがリンコに迫り、網でからめ取り、バットなどで滅多打ちにしようとしていた。もう勝利を確信しているようだ。頭の中は、後の御馳走(?)のことでいっぱいであったろう。涎を垂らさんばかりのニヤけた顔をしている。
その時であった。
「ギャッ、離せ!」
フウカを羽交い絞めにしていた男の口から悲鳴が挙がった。
「何だ、こいつらは!?」
リンコに迫ろうとしてしていた者たちからも声が挙がった。あわてた様子だ。




