事後
兵一人ぐらいなら気配遮断のスキルで誤魔化せるはずだ。まだ階段近くに兵が来るまで時間がある。ランタンを消して、元の場所に戻せる。
少し急ぎめに走りながら、次の行動を考える。とりあえず階段近くの誰も見ないような場所に隠れればいいけど。まあ気配遮断があればばれることはないだろう。
まっすぐ進み、ランタンをもとの位置に戻す。あと10メートルぐらいで、階段に来る。隠れ場所が見つからない。
タンタンタンタン
見張りが階段を下ってきてしまった。指に炎が灯っている。魔法かよ。
気配遮断があれば、足音もしないし、魔力も感知されない。しかし、姿は見えてしまう。スキルはレベルアップするらしいが、俺は1LVだ。この状況だと、なにかに注意をひかせるしかない。
俺は、見張りが最後の段を降りる3秒前ほどに、階段の横から顔を出しネズミを思いっきり見張りに投げた。
「うわああああああああああああああああ」
見張りは情けない声を出しながら、発狂して、ネズミを自分からとろうとしていた。
その隙に俺は、見張りの背中をとおり抜けていく。階段を1段飛ばしで、駆け上がった。
階段を上りきると、心臓がバクバクしていた。走ってもとの部屋に戻ったほうがよさそうだ。叫び声で誰か来るかもしれない。
なんとか部屋の前まで、走ってきた。外には何人か、他の見張りが集まってきている。俺がいたことはバレていないはずだ。
俺は本を枕の下に置き就寝した。
翌日、何事もなかったように、一日が始まった。まあ、ネズミにあんな大声で叫んでたら笑いものにされておしまいだ。俺だって、触りたくもなかったけど、叫ばなかったんだ。
食堂で朝食を一人で食べていると、誰かが話しかけてきた。
「三浦くん.....一緒に食べてもいい?」
こいつは、河野舞だ。一応俺の幼馴染だ。そろそろ俺に話しかけてくると思った。
俺は、中学生になってから、河野と関わらないようにしていた。河野は、小学生の時まで、俺としか関わってなくて、他の人とは全く話しかけようともしなかった。中学生になってから、河野は他の人とも喋るようになって友達もできていった。
それでも俺といる事が多くて俺は困った。男子と女子は一緒にいるだけで変な噂が立つ。それは俺にとっても河野にとっても良くない。だから俺は、河野を赤の他人として接することにしていた。
もちろん河野が俺を赤の他人として接してくれるわけがない。だから俺はわざと河野と喧嘩をした。そして関わってこなくなった。
別に異世界に来たから河野が話しかけてくると思っているわけではなく、喧嘩をしてからもうすぐ2年が経つので、そろそろ話しかけてくるだろうと思っていた。
「ごめん河野さん、俺もう食べ終わっちゃったんだ」
「……………わかった。じゃあ明日は一緒に食べてもいい?」
「え、いや一緒に食べるのはできない。俺一人で食べるのが好きなんだ。」
ちょっと強く言えばすぐ引っ込む。
「あ....そうなんだ」
そういうと、河野は友達のところへ戻っていった。
「あのさ、僕も一人で食べてたんだけど一緒に食べない?」
またか......... 今度は誰だよ。
こいつは、クラスメイトの……………誰だっけ。嫌われてもいいことはない。一緒に
食べるか。もう食べ終わってるけど。
「いいよ。えーと……………ごめん名前覚えてなくて。」
「阿部だよ。僕たち喋ったことなかったし、僕影薄いからしかたないよ。異世界に来たって、影薄いしね。」
こいつは、典型的な陰キャだな。ただ一人が嫌だったから俺に話しかけてきただけだと思うし、悪いやつではなさそうだ。
「この世界にきてから、結構気になってるのがさ、職業とスキルなんだけど、三浦くんはどう?」
食堂のおばさんにおかわりをもらってきた。
飯を食いながら、どうでもいい話をする。適当に話をあわせよう。
「俺?んーやっぱり職業かな。俺魔術師がよかったんだよね。魔術、最初から使えるじゃん。別に他の職業でも使えるけどさ、魔法の上達が早くなったり、ステータスが魔術に特化するじゃん。」
「ということは三浦くんは、魔術師じゃないんだね。僕は、魔術師なんだ。三浦くんは何の職業?」
なんかこいつむかつくな。職業は適当に嘘をつこう。
「僕の職業は剣騎士なんだ。剣も嫌いじゃないんだけどね。やっぱり魔術師がよかったんだ。」
「今日はクラス全員、前会ったと思うけどラウス先生が来て、学校に入る前に色々と教えてくれるらしいよ。ラウス先生は剣騎士って城の兵の人が言ってたよ。三浦くんは同じだね。よかったじゃん。」
どうでもいいな。しばらく前の世界の話を阿部としていた。早く部屋に戻って本を読みたい。そろそろ、会話をきりあげよう。
「阿部ごめん、この世界に来てから、体が慣れてないのか、あまり眠れてないんだ。先帰るね。」
「わかった。一緒にご飯食べてくれてありがとう三浦。僕たち友達ってことでいいんだよね。」
なんで友達にならなきゃいけないんだか。
「うーんそうだね。いいと思うよ。じゃあ、じゃあね。」
俺は食堂をあとにして、部屋に戻った。




