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13/16

不幸中の幸い

すうぅ…………はぁぁー……すうぅ…………はぁぁー……


落ち着こう落ち着こう落ち着こう。深呼吸だ。


鏡の向こうに先生たちが見えなくなってから、もう30分は経っている。鏡の前で突っ立ってたら、いきなり、後ろからでっかいイノシシみたいなモンスターに襲われた。


気配感知がなかったら死んでいた。そして今、逃げて逃げて、狭い穴の中に入り込んだ。イノシシみたいなやつは、もうどっかいったけど、もう穴の外にでるのが怖くなってきた。


食料もないし、早くこの階層をクリアしなきゃいけないのに、俺は穴の中から出ることもできていない。だいぶ気持ちは落ち着いてきた。


よし出よう。


穴からゆっくり抜け出す。


ふう。近くにモンスターはいないみたいだ。歩いても気配遮断のおかげで音はでないが、ゆっくり歩いてしまう。


洞窟内は、近くにある鉱物などが光っていて、薄暗い。俺は近くにあった鉱物を一つ砕いた。松明の代わりになった。燃料もいらないし、便利だったから、次元の狭間の中に手当たり次第大量に砕いて入れていった。


しばらく歩いた。


まだ階段が見つからない。


あ


一体、すぐ近くにいる。ここで戦うのはやめといたほうがいい。道を引き返そう。真後ろに方向転換する。


?


目の前に、モンスターがいた。コウモリみたいなやつだ。天井に足をくっつけて、ぶらさがっている。


なんでそこにいるんだ?気配感知には、感知されていない。なんで?


気がついたときにはすでに俺は走り出していた。


頼むから来ていないでくれ。後ろを振り向いた。


ガンッ


何かが、思いっきり俺の頭にあたった。クラクラする。


ああそうか、このモンスターに攻撃されてるのか。そりゃ、俺のほうがこいつより速いわけがない。


そいつは、ゆっくり俺の周りを回りながら、俺を見ていた。威嚇行為みたいなやつなのか?


えぇ、俺死ぬの?なんで俺が死ななきゃならないんだよ…………………………


嫌だ。俺はあいつらを殺さないといけない、まだ死ねない。それなのに、こんなところで、モンスターごときに殺されるのかよ。


嫌だ。


もう手段がない。


でも……………


「最後ぐらい、悪あがきさせてくれよ」


「強奪(ロバリー)!」


…………………………


かっこつけて威勢よく言い放ってみたけど何にも起こらなかった。


はあ。



※



一体何時間経ったんだろうか。俺は殺されていない。俺はまだ、この場から一歩も動いていない。何もされない。さっきからコウモリは、ずっと動かない。


俺は動いていいのか?


……………そっと、右足を動かした。


コウモリには、反応がない。


左足も動かした。でも反応がない。


そして、立ち上がった。


反応がない。


俺は、すぐに、元の鏡がある場所まで走っていった。


なんで、コウモリは、俺を攻撃してこなかったんだ?しかも、追ってきてもいない。


死んでる?のか?


それはありえない。それだと、俺が強奪で殺したことになる。何も起こっていないんだ。なのに殺せたわけがない。


あっ


ステータスの通知をオフにしていたのを忘れていた。これで俺が殺していたなら、通知にあるはずだ。


相変わらず効果音はなく、ぬっとパネルが出てきた。


俺は通知を押す。


《LV398のバッドバットを倒しました。》


よかったああああ。あのコウモリ死んでたんだあ。驚きよりも先に安堵した。それにしても、本当に強奪で殺せていたんだ。何も怒ってなかったのに………………。


こういう時、固有スキルは、説明がないから本当にうざい。でも強奪で殺せるんなら、この階層は、安心だ。


それに…………………………


LV454!


体が、更に軽くなっていたことに、今更気づいた。このレベルなら、この階層でも戦えそうだ。


よし!行こう。



※



「なんでまたこーなるんだよおおおおお」


俺は、また死に物狂いで走っている。最初に出くわしたイノシシにまた出くわしたのだ。俺は、「強奪(ロバリー)!」と何度も叫んだのに、なぜかイノシシが死ななかった。


どうすればいいんだ。強奪が使えなければ俺はなんにもできない。


とにかく強奪の能力を分析するんだ。分析するしかない。


ただ叫ぶだけじゃだめなら何かが必要なんだ。


コウモリに唱えた時と何が違うんだ?それに気づければ殺せる。


そういえば、あの時は、イノシシに使ったときよりも、近くで使った。もっと近くじゃなきゃだめなのか?あんなに近づくのは嫌だ。


はあはあはあはあ


でもそろそろ限界だ。もう一回だ。


俺は急停止して、イノシシの目の前で言い放つ。


「強奪(ロバリー)」


えぇぇぇぇぇぇぇぇ


なんで死なないのおおおおおお。


がはっ


思いっきり体当たりされた。ふっとばされた。10メートルは吹っ飛んでいる。


いってぇ。なんでだよ。


こういう時こそ、スキルの本の知識を思い出さなきゃいけないのに、最初の方デヨンだから全然覚えてない。次元の狭間に入ってるけど、この状況で読めるわけがない。


『スキルとは、気持ちが大事だ。スキルを使う時こそもっとも冷静になれ。そのスキルを何に使いたいか。その気持ちが一番大事だ。』


なんでここでリウムの言葉が出てくんだよ。


気持ち気持ち気持ち気持ち。気持ちってなんだ?そのスキルを何に使いたいか。要するに意思ってことか?


確かに、気配遮断を使う時は、隠れたいとか、バレたくないとか思ったときも発動する。


意思意思意思。


俺は、強奪で何をしたい?


このイノシシを殺したいんだ。


殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す


立ち上がってもう一度イノシシに言い放つ。


「強奪(ロバリー)」


イノシシが動かなくなった。バタンと床に倒れた。


「殺せた……………」


俺は、その場で膝をついた。


これだけは分かった。


スキルは、意思次第で、能力の使い勝手が変わるんだ。


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