57、ご先祖
14日投稿予定だったのに、遅くなり申し訳ありません。
今後は不定期投稿になりますのでよろしくお願いします。
加筆修正しました。
絵梨と要の姿が見えなくなった後、再度曽曽祖父の実が姿を現した。
「本当に良かったのか。朋恵よ」
1人残した孫を案じこの5年近く気を揉んでいたのを知っている実と俊明は、35代目の墓を見つめれば、スッと1人の女性が姿を現した。
35代目、最後の当主。白芭朋恵だ。
「良いも悪いもこれで良かったんですよ。もし今顔を合わせたら永遠に感じるほどの長い時間拘束されて文句のオンパレードになることは目に見えていますので」
「ほぅ!そう言う所もお主そっくりか」
「どういう意味です!祖父様!」
「そのままの意味じゃよ。しかし相当頭が切れる子じゃな」
「・・・・やれば出来る子なのですよ」
「よっぽど扱いが難しい子じゃったようじゃのぉ」
「前世の記憶が蘇った今の私でも、どう扱っていいか戸惑っていますよ」
「ふむ、初代の依代じゃったか?」
「はい。そして前世私の母だった琴子の生まれ変わりであった真梨の死は今でも信じられません」
「家系図に載っていない隠された2代目か。まさかあの池の辺りにある墓石がその方々のものとは梅雨知らず、不敬であったな」
「あえて隠していたのです。そこは不問になさるでしょう」
嘆息後、自身の立っている真下を見つめて口を開いた。
「しかしここに来て不確定要素の存在すらも呪われ、ここに収容されたのは心が痛みます」
「ふむ、それはお前さんの娘のことかのぉ」
「そうです。無紋でありながらその血筋のために命を狙われたあの子のことを思うと居た堪れません」
「そうじゃな・・・」
しんみりする祖父と孫をよそに、俊明は眉を下げて帰って行った絵梨達の方向をただじっと見ていた。
「憤慨してたけど、また来てくれるかな?」
孫に会えたことがよほど嬉しかったのか、俊明がそわそわとした仕草で言えば、朋恵は冷めた対応をした。
「心配しなくても何度も来るようになるでしょう。調べ物をするつもりなのか、ここを通って本堂に行く気ならここを通ざらるを得ないのだから」
その言葉に実が意地悪そうな顔つきで朋恵を見た。
「お前さんなら自分の立場に置き換えたら、その時どう行動する?」
「恨み辛みを吐き出すように悪態つきながらここを通るでしょうね」
絵梨の性格、自分ならそうするだろう事を口にすれば、実は笑った。
「フォッフォッフォ!じゃああの子もそうするじゃろうて!」
愉快愉快と笑う祖父にジト目でチッと舌打ちした朋恵は、絵梨が帰って行った方へ視線を向けた。
「本当に手助けしてあげないつもりかい?」
俊明の言葉に朋恵は眉を顰めたが頷くしかなかった。
「手を差し伸べるだけが救いとは限らない。特に絵梨は呪術を学んで来なかっただけにその知識が乏しい。それに私が教えることのどれだけがあの子の役に立つのか未知数だ」
初代が扱う呪術は2代目以降の陰陽師のそれとは異質なるもの。
巫女時代に培ったものに近い、その祈りに近い術は、我々では理解し難部分があった。
初代と同じ紋を持って生まれた絵梨に正攻法は通用しないと感じている。
「あの子が見て感じ行動に移すこと。成長するにはそれが1番の近道だ」
「最もらしいこと言っとるが、それと対面しないことは別問題じゃろうが」
図星を突かれて朋恵が半眼になると実は呆れた。
「天下の女帝と言われたお前さんが孫には叶わぬか」
「仕方ないでしょう!記憶が蘇った以上、依代とはいえ初代そのものなんですよ!文句言われようものなら心臓に悪い!」
「もう死んどるんじゃから、別によかろうが」
「そういうことではなく!母の教育の賜物で、魂に刻まれているのですよ。初代からの言葉は絶対。今世の立場も忘れて付き従うようにプログラムされているのです!」
その言葉に実は眉を顰めた。
「今世の魂にすら干渉しておるというのか?」
困惑顔の朋恵は俯きながら呟いた。
「先ほど何度も絵梨に呼びかけられた時、必死に抵抗しなければ対応していたでしょう」
「高彬様といい、真の二代目様といい、バケモノ揃いよのぉ」
誇らしそうに頬を緩める実に朋恵は顔を強張らせた。
「感心している場合ではありません。そのバケモノ染みた人たちと肩を並べる術師が、その子孫が、白芭に悪意を打つけ負の連鎖を引き起こしているのです。ここで無に返さなければ絵梨の命も危ぶまれる」
「ならプログラムに則ってあの子の力になってやる方が賢明なのでは?」
それでも吃る朋恵に、実は盛大に息を吐いた。
「今世の祖母としての矜持は捨てたらどうじゃ」
「絶対嫌です」
顔を突き合わせてまでも否定する孫にやれやれと肩をすくめた。
「それより悪いことしましたね。彼のコートに穴が空いてしまった」
相変わらず孫達のことにしか頭にない俊明の言葉に、実も朋恵も平然としていた。
「問題ないじゃろう。ここは夢現と同じ場所じゃ」
「結界の外に出れば、ここで受けたことは無に返す」
それに捕捉するように実が説明した。
「つまりなかった事にされるんじゃよ」
驚く俊明に朋恵が現実を口にする。
「今頃外に出てその現象を目にしている頃だろう」
「それを見たあの子はまた先祖に遺恨を残すじゃろうて!」
人ごとのように笑う実に朋恵が吠える。
「笑い事ではないぞ、祖父様!」
「その矛先は間違いなくお主じゃろうな。フォッフォッフォ」
そう言って消えた実に朋恵はへの字口で立ち尽くしていた。
その悪戯を決行したのは前世の両親だ。
「文句ならその2人に言ってほしいが、もうここに霊魂がいない以上、私が的になるしかないのか」
ただあの2人のツーショットを垣間見た時、懐かしさが蘇り涙が出そうになった。
初代とその〈鍵〉の依代。
「2人の仲は良さそうで良かった」
安心し呟けば、ツッコミが入った。
「対外的と内情は別物じゃろうに、自分がそうじゃったことを忘れたんか?」
消えたはずの実の声がして朋恵は憤慨した。
「いちいち突っ込む癖やめてもらえませんか!?」
「お前さんがその度に反応するからやめられんのじゃよ」
夫婦漫才のようなやり取りを側で見ていた俊明はニコニコ顔だ。
この空間に若人2人が最初入った時から俊明はその動向を見守っていた。
墓地に繋がる門扉が開いた瞬間、朋恵がそれまで自身の地面部分を見て渋い顔をして考え込んでいたのに、急にハッとして現在地の真正面に向かって反応したのだ。
「不味い!私は中に戻るぞ!」
そう言って引きこもってしまった。
「どうしたの?朋ちゃん」
「朋ちゃん言うな!それよりこの先私に話しかけるな!絵梨が来た!」
「絵梨って・・・美鈴の2番目の子?」
「そうだ!絶対顔を合わせれば恨み辛みを吐くに決まってる!以後対応しないからそのつもりで!」
その言葉の途中で俊明は早る気持ちを抑えきれずに、真正面の門扉に向かって飛んで行った。
普段この中を散策することはなく、不慣れでヨタヨタしながら飛んでいった関係でその姿を見つけた時には、案内人と一緒に〈鍵〉を伴って池の辺りにたどり着いた所だった。
娘の美鈴に似た孫を見つめ感無量と涙ぐんだその時、トラップが仕掛けられていたのか小石や矢が飛んで来て俊明は驚いた。
生前その場所に足を踏み入れたことはなかったので、そんな仕掛けがあったことに今の今迄知らなかっただけに肝が冷えた。
だがその咄嗟の出来事にもかかわらず、〈鍵〉と思しき人物が絵梨の危機に身を挺して守っている姿に自分と通ずるものがあり、俊明は素直に彼を受け入れられた。
自身の娘の結婚には納得がいかない部分があっただけに、こうして彼と対面し話できたことは行幸だった。
君たち2人が常に一緒にいれば、どんな困難にも立ち向かえる。
「2人とも頑張れ」
俊明は雲1つない空を見上げて、そう呟いた。
その頃、門扉を出て公園裏口を出た絵梨は憤慨していた。
ボロボロになったはずの要のコートが、入る前と同じクリーニングから帰って来た時同様の綺麗な状態に戻っていたのだ。
伊代の『余興』とはこういうこと!?
どこまで人をおちょくれば気が済むのか!
許すまじ!2代目夫婦!!!
寒風が吹き抜ける中、怒りが収まらない絵梨は一度門扉の方に視線を向けて睨みつけた。
そんな絵梨を弱目で見つめた要は彼女の手を引いて、車を駐車した場所まで移動した。
今回の出来事は元々マリンのイタズラに慣れていた要には、些細なことだった。
ただ怒りの収まらない絵梨を見て、怒りが増すのはお腹が空いたからかもと思い至った。
ちょうど昼食時間だ。
どこ行こうか、などと話をしながら日常に戻った2人だった。
要はデートだデート。と足取り軽く移動しそれを見た絵梨は、いつまでも引き摺るのも馬鹿らしいと気持ちを切り替え、最初2人で訪れた中華料理屋に行こうと誘えば、要は微妙な表情になった。
デートには不向きと思ったのだろうが、2人の思い出の場所でもある。
要が信頼する人が経営している店に赴き、紹介してくれないのかと言えば、彼の顔色がパァッと明るくなり意気揚々と車を走らせ始めた。
現金だが、要らしさに思わず笑ってしまった絵梨だ。
ただし注文するメニューは、絶対2人分野菜多めのものにするけどね。
と、笑みを深めて外を眺めた絵梨だった。
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次回作は未定です。
今後は不定期に投稿になると思います。(病状が落ち着いていれば、毎日投稿または2日に一回?下手をするといつになるのかわからない・・・・。)
予告投稿が難しくなると思います。
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コメント等も受け付けていますので感想など頂けると嬉しいです。
それでは〜。




