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全てはここから始まった〜最後には根源、断ち切らせて頂きます〜  作者: 虹乃懸橋


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43、まさかの根回し


 なぜかあの後、葉山と静波は保健室でご飯を食べたいと保健室中央に簡易テーブルを置いて、大風呂敷を広げてしまった。


 葉山が食堂で食事をせず、わざわざ外のお弁当屋で昼食を買ったのは、もともと保健室で食べるありきの行動だったようだ。


 静波に限っては自分のお弁当箱を葉山との買い出しの前に保健室に置いていたようで、保健室内側入り口にあった鞄からお弁当箱を取り出しニコニコ顔で食していた。


「何でここで食べるのよ」

 友達どうした?


 葉山の言い分はこうだった。

「だって先生、夏にはいなくなるって言うから寂しくなって」


 静波に限っては私事だった。

「今週末のことで少し話が出来たらと思って」だ、そうだ。


「まず、ここでの飲食は基本禁止されてるからね」

「え、飴舐めてる先生がそれ言うの!?」

「それ以上にタバコはもっとよくないのでは?」


 この子達、今私を脅しているのか?


 痛いところを突かれ、“私は良い“とは教育者として絶対口にしてはいけない立場ゆえに、閉口するしかなかった。


「今日はいいけど、明日からはダメだからね」


「何でさぁ!」

「そう思う子が他に出て来ないとも限らないでしょう。これ以上私の立場を危うくしたら期日前に退職する羽目になるから遠慮して」


 楢崎、利籐の件もある。

 途中解雇はあり得ることを知っている2人はシュンと目に見えて落ち込んだ。


「今まで通り、ご飯食べた後にここに寄るのは止めないわよ」

「それだと先生を独り占め出来ないじゃん」

 口を尖らせて言う葉山に絵梨は保健師として正論を言った。


「そりゃ私はこの学園の生徒全てに平等に接しなければいけない立場だからね」

「そうだけどさぁ」


「知崎さんに限っては辞めた後、いくらでも会えるでしょう」

「それは難しいです。だって叔父さんが絶対離さないもん」

 絶対って言い切った?・・・・そこ決定なのか。


「先生、静波ちゃんの叔父さんと結婚決まったって本当?」


「、、、、何で知ってるの?」

 思わず低い声で言えば、2人はビクッと震えた。


「私は決して良い出自ではないの。今はその情報を拡散させないように大人は心血しんけつ注いでいるのに、なぜ口にしたの?」


 静波に言えば、肩を落として黙ってしまった。

 無自覚かと思ったが、どうも違うようだ。


「大丈夫だよ、先生。私は先生の味方だから」

 その言葉の意味がわからず葉山を見ると、突然カミングアウトして来た。


「私先生がここに赴任して来る前から、先生が白芭の人だって知ってる側だから」


 ・・・・・何?

 驚愕な目で見ることしか出来ない絵梨に葉山は姿勢を正し、保健師を見つめた。


「元々うちは白芭に出入りが許されてて、祖父母が若い頃から助言してもらうことが何度かあったらしいの」


 この先はまずい。

 思わず絵梨は聞き手で、パチンと指を鳴らした。


 少なくとも自分たちの周りだけでも防音しておかなければ、葉山すらも危うい立場に追いやる可能性に背筋が凍った。


 同時に知っていた側、ということは女帝が暗躍したことを示唆していた。


 指を鳴らした後、室内が異様な静けさに包まれた2人は一瞬ギョッとした表情になったが、直後なぜか目をキラキラさせて来た。


「先生やっぱり白芭の人なんだね」

「私も両親からある程度は聞いてたんですけど、能力を持ってるんですね」


 そうなったのは他でもない、要と接触したからなんだが、、、、複雑な心境で絵梨は葉山を見た。


「知っていた、ってことは女帝から何か言われていたの?」


「そう、今から約6年前だったかな。ある大口の仕事が舞い込んでうちの両親やる気満々で受けようとした直前に白芭の、女帝?って人が来訪した後『辞めておけ』。そう言って助言してくれたって言ってた」


 何!?

「来訪?」


 白芭は基本、本邸にあるお堂に客を招いて吉報を占ったり縁切りを行う。

 ましてや予定にない予言を自ら足を運んでするなど、今まで聞いたこともない。


「両親もその時は目玉が飛び出るほど驚いたって言ってたよ。しかも代替え案としてその時に別口案件の方に注視する方が事業は成功するって言われたもんだから、速攻で実施したらあれよあれよと言うまにうちの町工場だけでは賄いきれなくなって、今じゃ数軒の工場にも受注する側に回ったから左団扇ひだりうちわだって言ってた」


 左団扇:(意味)

 右利きが多い中で、あくせく働かず、利き手ではない反対側の手で悠々と団扇を扇いでいる様子に由来する言葉。仕事に追われることなく、のんびりとくつろいでいるように見えることから慣用句として使われる。


 あえて助言したと言うことは、それでも対価を求めたはずだ。


「その時に何をお願いされたの?」

「それこそ私が知ってる側に回ったことだよ。あの時白芭の女帝は祖父母に対してこう言ったそうよ」


ぬしらの孫が高校入学して2番目の保健師こそが我が家門の者である。影ながら支えてもらえると助かる』

 そう告げたと言う。


 6年前に葉山製作所の突然来訪しその言葉を言ったと言うことは、その時点で祖母は私が保健師として、ここの出入りをしていることを知っていた。


 仲嶺関係者と引き離したにも関わらず、後に宇崎の陣営に紛れている事実を夢で知ったのだろうな。


「他には何か言ってた?例えば私に伝言のようなものはなかった?」

「あったよ!確か、、、、『私が出来ることはここまでだ。後は自力で何とかしろ』後は、、、、、そうそう!」


『私を当てにして聞きに来るような真似だけはするなよ』

「って言ってたらしいんだけど、どう言う意味?」


 週末、お墓参りするタイミングでその話題か。

 つまり霊体(祖母)との会話が出来るにも関わらず、黙秘を貫くと言っているのか?


 ふざけてんな(怒)


「・・・・他には?」

「他はないよ。ただ・・・・これも意味がわからなかったんだけど、もう1つ助言されたって言ってた」

 1つだけに留まらず、2つも助言を?


『孫に起きる出来事に注視しろ』

 一見、葉山の祖父母に向けた言葉に聞こえるが、謎めいた言葉は、、、、助言ではない。


 助言相手に曖昧な言葉を告げた場合、それだけまどわし思わぬ行動に出るようになる。

 失敗するリスクをはらむ行動を、白芭がわざわざ相手にさせるとは思えない。


 では、この言葉は私に警告しているのか。

 一々回りくどい言い方をするな。


(つまりこれ以降、葉山さんによくないことが起きる、と私に伝えていると言うことだ)


 相変わらず身内には手厳しいな。

 姉に限らず白芭の人間は仕事相手以外の者には意地悪をせねば気が済まないのか(怒)


「わかった。最後の助言は私に向けた言葉のようね」

「え、私に向けた言葉じゃなく?」


「無関係ではないと思う。そう言う意味で葉山さん、今後の行動には注意を払いなさい。その上で何か起きた時には一番に私に報告に来なさい。殺し以外のことなら私が何とかするから」


「わかった!」

 漢顔で親指を突き出した葉山に絵梨が苦笑いすると、横にいた静波が「良いなぁ」と呟いた。


 絵梨は笑顔を静波に向けて「あなたもよ。何かあったらすぐに言うのよ」と助言すると照れくさそうに「はい!」と笑った。


 不届者教師の件も早めに報告してくれていたら、彼女自身がここまで苦しまなくて良かったのだ。

 そのことは静波が一番理解しているだろうとこれ以上のことは言わなかった。


 そんな和やかな雰囲気を壊したのは、謹慎が解けた恭二の乱入からだった。


 無遠慮な保健室の戸の開け方に防音効果も切れ、遠くの学校の騒音が耳についた。

 誰もが驚いて入口を見れば、まさか生徒が保健室で食事しているとは思ってなかった恭二も驚いて動きを止めた。


「静かに入って来なさいよ」

「悪い、まさかここで食事する生徒がいるとは思ってなくて、、、、、って!ここは飲食禁止だぞ!」


 分かっとるわ!止まられなかった自分にも責任があるが、重要な話を聞けた以上、ここは穏便に話を進めるのがよかろう。


 絵梨は立ち上がって、生徒を見た。

「少し席を外すわ。食事が終わったら教室に戻りなさい。それまではここには他の人間を近寄せないようにしておくから」


「「はーい」」

 邪魔者が現れ、絵梨の立場が悪くなることは2人とってもよろしくないのだろう。

 先ほどとは違い素直に返事をする2人に挨拶をして、悪態をいまだついている恭二を引きずって理事長室に向かった。


「お前、瀧田さんと会ってたんじゃないのかよ」

「とっくに解散したわよ」


「俺のこと、じゃなかったのか?」

「それも含めて聞いて来た。けど解決策はなかった」


 恭二もあの時の映像を客観的に見て、おかしいと感じたのだろう。

 蘭丸との会話であの時の事に覚えがないことは知ってはいたが、タチが悪いなと絵梨は嘆息した。


「じゃあ俺はあのままなのか?」

「そうとも言えるし、違うとも言える」


「どう言う意味だ?」


 理事長室に繋がる階段を登っていた絵梨は横にいる恭二に視線を向けた。


「あんたは《呪縛》を受けながら、そのことわりから外れた行動をすでに取っている。縛られていながら、それとは無関係の人間と結婚し子供までいるのは、1度はその《呪縛》の範囲を離れていたからよ」


「仲嶺や宇崎を離れていたからか?」

「そう考えるのが妥当でしょうね。物理的なのか精神の話なのかはわからないけど、1度その《呪縛》の理から外れたなら、もう1度離れることは可能のはずよ」


 絵梨は恭二の胸ぐらを掴み、顔を付け合わせながら呟いた。

「恭二、死ぬ気で姉さんのことは忘れなさい。意図的に遠ざけてでもね!」


 無意識に行動することはどうしようもないが、やまいは気からとはよく言ったものだ。

 その意識が変わるだけでも制御は難しくはない、と思いたい。


「ああ」

 花凛に可愛そうなことをした自負があるのだろう。恭二にしては反省しているらしく、しおらしい態度に毒気も抜けた。


 胸ぐらを掴んでいた手を話ながら、諜報部隊隊長に依頼を口にする。


「姉さんのことは他の者に任せてあんたは事件のことには一切、手を引きなさい。おじさんのことに関して情報が入ったら知らせるから」

「分かった」


「その代わり別件で動いて欲しいの」

「俺が関われる話か」

「事件とは無関係だけど、白芭には関係することよ」


「・・・もしかして瀧田さんのことか?」

「ええ、彼女の素性を徹底的に暴いて欲しいの」


「怪しいところがあるのか?」

「違う。けど事件後彼女の幸せを考えてやって欲しいって祖母ちゃんに言われてる以上、実行しないわけにはいかない。あんたのことで色々と助言もしてもらったしね」


 そこまで言われれば、流石の恭二も二の句が告げられず、少しして「受領した」とボソリと告げた。


 理事長室に行き、正式に宇崎に依頼した後、指定した時間の周辺の防犯カメラから瀧田の行動や会話相手から情報の引き出し。

 そして、喫茶店で瀧田が飲んでいたカップを確保しているため、DNA鑑定に出すように依頼した。


 夢でお告げを受けなくとも、現代ならではの文明の力で取れる情報も侮れはしない。

 昔の情報が役に立たないのなら、今出来る最善の策で情報を引き出すしかない。


 事件でない以上、妨害ぼうがいも滅多にはないはず。

 宇崎なら思わぬところから、情報が舞い込むはずだ。


 そう思っていた絵梨だったが、週末意外なところで彼女の出自に関する情報を入手するのは絵梨本人だった。



 


面白な、良かった、続きが気になる!と思われたらブックマーク登録、作品の「評価」⭐︎アイコンボタン押して頂けると励みになりますので、よろしくお願いします。


次話は諸事情により来週水曜日(29日)UP予定です。

応援頂ければ、初回2、3話UP頑張りますので、評価していただけると嬉しいです。


他の作品に関しては、予定通り週一投稿予定です。


ではまた、来週からも見て下さいね〜。



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