28、嵐の前の静けさ ⭐︎
この先2人がいちゃつく時間ないから、とにかく主人公を甘やかしたかった(作者が)
2人の距離を物理的にも心理的にも近づけさせたくてイチャイチャさせました。
なので今回もR15指定で。
『これより先、私たちは赤の他人だ。間違っても親しいフリをしてはいけないよ。約束だ』
人差し指を唇に当てて言う榊原に親友達は最近まで彼の記憶だけ忘れていた。
要が榊原を普通の〈鍵〉なのか、と問うた理由がわかった。
実際に親友の彼らが記憶を失っていたのならそれは言霊と言う曖昧なものとは違う、意思を持つ呪言だ。
それが出来るのは、かつて存在していた陰陽師だけだ。
だが、、、現在も陰陽師の家系は残っているが、その力の大半を失い家系の流れを汲む神社などを守る職種へと変えている。
それを考えるとその線は消える。
陰陽師が衰退して久しいこの時代に、白芭が現在までその力を保持していること自体が特殊なのだ。
間違いようのない『正しい未来視』が出来る一族。
だからこそ時の権力者達は白芭を離さなかったのだ。
だが榊原が自ら呪言を用いた。
その仮説が正しいなら、彼は少なくとも呪いにより浮き名を流されることを気付いた時点で自ら避けられたはずだし、何より未然に防ぐことも出来たはずだ。
それが出来なかったとすれば、この自らという仮説は崩れる。
では誰かが彼にそれだけの能力を授けた、あるいは操った。と言うことなのだろうか?
一番説得力があるのは、状況から鑑みて現代まで唯一陰陽師の流れを汲む『白芭』が関係していることだ。
それなら一番あり得そうな仮説。
白芭の分家方だ。
絵梨捜索のために他人を巻き込み、誘拐も行うような人達だ。
薄い完全紋を持った者なら、人を操ることくらいは出来る。
その可能性は高いが、、、実際あり得るのか?
あの当時は白芭の女帝がまだ生きていた頃の話だ。
白芭邸宅内で分家方がおかしな動きをしていれば女帝が気づいたはずだし見逃さなかっただろう。
そうであるなら、、、白芭の管轄外にいる者の存在。
明治以降、白芭はその能力解放を行う者を統制し始めている。
能力解放者の数が減っている中、絵梨がそうであるように、白芭の理から外れた者がいたなら、可能だ。
誘拐騒ぎの最中、白芭なぎさの話をしている時、真一が言っていた。
『母親はどうしたの?』
『亡くなっているようです。彼女が小さい頃にはいなかったと情報が入っています』
もしその人物が生きていたなら?
白芭を離れ、本家を潰すために虎視眈々と狙っていたなら辻褄は合う。
本家を陥れたい者が真梨を地獄に落とすために事件を誘発させ、婚約者に対しても完全に悪評を流すために榊原の誠実さを知る者の記憶を封じた?
辻褄が合いすぎて気持ちが悪いが、もしその仮説が正しいとして何故、今になって呪言の効力を失ったのか、だ。
事件の謎の輪郭が見えて来たようで、今度は別の問題に直面したようだ。
絵梨の表情を見て要も嘆息した。
「俺の情報だけでは事件解明とはいかなさそうだな」
「そんな1回の情報収集で事件解決に持っていけたら苦労しないわよ」
宇崎の9年と私の4年間が報われないわよと言えば、要も弱り顔になった。
「昨日宇崎にも同じこと言われたな」
「それでも快挙よ。写真の解析はすでに宇崎に回ってるんでしょう。それが済めば榊原が誰と会っていたのかはわかるし、証言者の不可解な謎もなんとなく見えてきた」
絵梨はそこまで言うと、要に顔を向けると話を続けた。
「そう言う意味でも要くん。私その女性と会って話してみたいんだけど、お友達の実家の場所、知ってる?」
「河野の実家なら大学時代に何度かお邪魔したことがあるから知ってるが。証言者に会って話がしたいって、いきなり会って話を聞いてくれるだろうか?」
警戒されそうだが、、、と呟く要に絵梨はニヤッと笑った。
「そこは要くんの出番よ」
ん?
要領を得ない要が首を傾げる中、絵梨は自分の腰にまとわりついている腕に手を置いた。
「もちろん手伝ってくれるよね」
要が絵梨のお願いを否定しない、出来ないのを知っていながら言う彼女に、悪い子だと目を細めた。
「それは例え君に駄目と言われても今度こそ付いて行くし出来ることなら何でもするよ。だからエリン」
ご褒美頂戴、と膝の上に座っている彼女の顔に唇を近づけた。
また変な雰囲気になって来たと絵梨は反応した。
「要くん」
警戒して胸元に手を置いて突っぱねる絵梨の腕を取って逃げ道を塞ぐ。
「大丈夫、挿れはしないから」
何を!?
「ちょっと待っ!」
言うや否や、ソファに押し倒されていた。
「私言ったよね!?」
「エリンは難しく考えすぎ。それでも怖いって言うなら一方的じゃなく、今日はエリンだけ気持ちよくしてあげる」
それもノーサンキュ!と言おうとしてあっという間にGパンを脱がされショーツに視線を向けられ顔が真っ赤になった。
先ほどの要の色気ボイスのせいで濡れていることに絵梨自身気づいており、もう嫌だと両腕で顔を隠した。
「大丈夫。これは正常なことだ。しかも気のないものには反応しない。と、言うことは少しは俺のこと好感は持ってると思っていいよね」
「嫌いではない」
「ツンデレさんの言葉だから真逆に捉えればいいのかな。好きって事だよね」
ちょっと暴走気味になってませんか、要さん!
嬉しいと押しつぶされる勢いでぶちゅっと口付けられ、慌てた。
「ねぇ、本当に最後までしない?」
「しない。その代わり太ももは貸してもらうと思うけど」
それは世間で言う素◯!?
驚き目を見張る絵梨に要はそっと顔に手を置き上から覗くように視線を合わせて「好きだ、愛してる」と呟いた。
絵梨は視線を逸らして「閨での甘言は信用ならないって誰かが言ってた」と言うと、要は手を止めてジッと少し熱が治った目で絵梨を見つめた。
「こうやって相手してると、エリンってマリンに似てるよね」
!?どう言う意味!!
「君達姉妹は全く似ていないと思ってたけど、好きな人に対してイタズラしたり右往左往させたりする所なんかそっくりじゃないか」
それは看過出来ん!!私は姉さんのあのイタズラ好きには振り回されて来た側だ!
そう思ったが、要に両手を取られグイッと強引にソファに押し付けられ見つめられたが、どうも瞳に怒りが混じっていらっしゃる。
「困った子だ。俺を翻弄して楽しんでいるのかい?」
全くそんな意図はございません!と首を振るが、拘束する手が緩まない。
「じゃあ、無自覚なのかな。とんだ小悪魔じゃないか」
その表現も看過出来んぞ。
「心を惹きつけて翻弄する女を小悪魔というならまさに今君がしていることと何が違うの?」
だからそんなつもりはなくて、、、、恥ずかしさに思わず口を突いて出たというか。
「恥ずかしかったの?」
・・・・・だからなんで人の考えていることがわかるんだ!
「今に限ってはエリンの顔に出てたからわかったんだけど」
ヒョッと肩が上がるほど驚き、白芭の人間としては失格じゃん!と涙目になった。
「エリン、俺の前でくらい素に戻ったっていいじゃないか。人は常に気を張ることなんて出来ないんだから。俺はそんなエリンの止まり木のような存在になりたいんだ」
どっかで聞いたようなセリフだな。
「またそうやって茶化す。エリンの悪い癖だ」
と、涙で滲んだ目元に唇を当てた。
私も初めて知った癖ですが?
「色んなエリンを見せて。どんなエリンでも受け止め受け入れるから、恥ずかしがらずに全部見せて」
どんどん色気が増してきて、キャパオーバーなんですが!?
「少しずつ慣れて行こうね」
「そこは私に合わせてくれないの!?」
「そんなの待ってたらお互いおじいちゃんおばあちゃんになっちゃうよ」
全否定かよ!
「もう黙って」
ソッと触れるキスをした後、下唇に親指を手をかけ少し力をかけ押し下げた。薄らと開かれた唇の隙間から舌を捩じ込み、絵梨の舌に絡ませた。
お互いの唾液が絡むようにチュッチュクッと音を立ってて唇や舌の感触を楽しむ要とは別に、絵梨は体勢も相待ってプチパニックだ。
脳内が悲鳴に近い雄叫びを上げる絵梨に要は「そっちも思考停止するくらい濃厚な時間に変えようか」とキスの合間に呟き、完全に絵梨の体が固まった。
「しないって「もちろん最後まではしないよ。もうほとんど使われない表現だけど、男女のスキンシップで言う所のA、Bってところかな。そこまではいいよね」」
「拒否権あるならA止まりでおね「無〜理」」
今まで性急なキスをされることが多く、心構えもないまま受け入れてきた口付けが、今日に限ってねっとりと時間をかけて口内をほぐすようにゆっくりとかき混ぜられ、逃げる舌を追いかけ絡ませられる。
呼吸を忘れるほどに深く、抗いようのない熱量に押し流され思考が真っ白に染まる。
時間が止まったかのような錯覚に陥り互いの鼓動だけが重なり合う。
腕の拘束が解けたことにも気が付かず、少しずつ要の舌に絵梨の舌が順応しチロチロと動き始めれば、要は笑みを溢し胸の膨らみへと手を伸ばした。
小ぶりではあるがその胸の形がお椀のように綺麗な形をした、重力に逆らうような上向きで全体のバランスがいいことを知っている要は脇から体に沿うようにソフトタッチに移動し目的の場所で服越しだがその感触を楽しむ。
最初は優しく、徐々にその強さが増し形のいい胸を崩すように揉みしだく。
お互いの体温が上昇し要の指も冷たさがなくなった時慎重に服の下から手を入れて敏感になった胸の頂きをグリグリと押しつぶせば下にいる彼女の体が一瞬逃げるように体をくねらせた。
「逃げないでエリン」
「恥ずかしい、恥ずかしいの」
真っ赤な顔で瞼を固く閉じ、消えそうな声で呟く絵梨に要は全身ゾクゾクして狂喜を含む笑みを浮かべた。
「あ〜可愛い。もっともっと可愛がってあげる」
要の口から小さく言葉が漏れる。
マリンではないが相手が右往左往する姿を見て興奮したのは初めてだ。
人のことは言えないな。
要が火照った体を持て余し、着ていた服を脱ぎ捨てて上半身裸になれば絵梨が顔を強張らせたが「大丈夫、暑いから脱いだだけだ。最後まではしないから安心して。だから、エリンも全部、脱ごうか」
有無を言わせぬ笑みで言えば、震えているが彼女から拒否の姿勢も言葉も出てこなかったことに歓喜した。
彼女の着込んだ上着を素早く脱がせ、肌にピッタリと沿うトータルネックの服を見て悪戯心が芽生えた。拘束代わりにトータルネックの衣服を腕途中で止めて放置したのだ。
驚く絵梨が拘束され動きを封じられたことに慌てて服を脱ごうと意識が腕に集中している間にショーツに手をかけた要は彼女の腕が解放された時には指と舌で、最も敏感な場所を味わった。
暖房のかかった室内で窓から覗く空模様は徐々に雲に覆われ、チラチラと粉雪が降り始めていた。
外気温が一気に冷え室内の窓ガラスが曇り始めたが、リビングではそんな寒さも無縁なほど熱気に包まれていた。
普段凛とした佇まいの彼女が与えられる快楽を前に喘ぐことしか出来ず、足の間にある男の頭を掴んで離さない。
揺れる腰をがっちりと腕で固定し良い所を逃さないと追いかける舌に長時間翻弄される。
時計の短い針が1つ動いた頃には、とうに恥ずかしさはどこかに行き、思考が快楽一色になった時、自分が何に怯え恐怖を感じていたのかも忘れて四肢を投げ出した。
難しく考えすぎだと言われたが、確かにそうなのかもしれない。
すでに2人の婚約は成立したし、どう足掻いてもこの男から逃れられないのなら、素直に受け入れるほかに手段はない。
どう言うわけか祖母の呪いが含まれているのか、外堀を完全に埋められている状態に若干まだ反発したい気持ちはあれど、拒否する気持ちが沸かないと言うことは、自分が思っている以上に要にはある種、情が芽生えているらしい。
そこに愛があるかと言われるとまだ分からないが、こうなった以上、逃げられないなら死ぬまで上手に付き合っていくしかないのだから前向きに考えよう。
今日言われた言葉の数々の中に、孤独の中で生きて来た絵梨に取って乾いた砂に潤いを与えられるほど甘美な言葉が含まれていた。
あの言葉があったからこそ、頑なな絵梨の心を溶かし動かしたと言える。
ただ、姉のマリンに似ていると言われたことだけは看過出来ない!それだけを胸に、数日ぶりに絶頂苦で意識を失った。
「あれ!エリン!嘘でしょう!、、、このタイミングで気絶?」
要は自身の下半身に視線をやり、額に手を置いて頭を抱えた。
可愛いくて夢中になりすぎた。
意識のない彼女では滾った下半身を治めるのは不可能だ。
深いため息を盛大に吐いた。
「仕方ない冷たいシャワー浴びてこよう」
長い時間浴室に篭っていた要がリビングに戻って来た時には絵梨は意識を浮上させていた。
暖かなタオルで全身を拭かれている感触に一気に目が覚め、タオルの争奪戦が繰り広げられたが結局要に軍配が上がる。
要が舐めていた至る箇所がヌル付き、その部分を何度も丁寧に拭かれ、羞恥で死ねる。と涙を流しながら要のお世話を受けた。
簡易的に要のTシャツに袖を通し、夕食にしようとしたのだが、絵梨は機嫌が悪かった。
「ねぇ、今日も宅配で頼んだ食事なの」
ダイニングのカウンターに置かれた腰高い椅子に座りながら、近所の韓国料理屋のテイクアウト商品のビビンバ丼のパックを前に、健康に悪いだろう!と苦言を呈す。
「ハウスキーパーを頼んでたんだけど、去年その人が辞めてしまってから後任が決まらないんだよ」
冷蔵庫を開けながら要が言う。
「条件が厳しいんじゃないの?」
「うーん、トラブル避けるために男性に限定してるから難しいらしいんだよ」
冷蔵庫からビールの缶を取り出した要が絵梨にもいるか聞いて来た。
「おばちゃんのハウスキーパーじゃ駄目なの?」
レモン酎ハイなら頂くと言えば、1本あったらしい。2本の缶を持って要がリビングカウンターの席に戻って来て絵梨の隣の席に座った。
「昔そういう人も雇ったけど、自分の娘だ、やれ親戚の娘だと仲介役を勝手に出られて家にまで押しかけられたことがあったから、女性のハウスキーパーは老若全て拒否にしてるんだよ」
缶酎ハイを絵梨の前に置きながら言う孤高の紳士も大変なんだな。
「人ごとのように感じてるみたいだけど、今後は君にも関係することだからね。そういう意味だと男もアウトか」
・・・なんで?と思ったが「俺がいない時に君が他の男といると思うと気が狂う」だそうだ。
どんだけ独占欲強いんだ。と思いながら強固な〈鍵〉なら縛りでそんなものか?と半分納得しながら話を続けた。
「問題は食事だけなの?」
「うん、年明けから様子見たけど掃除はなんとかなりそうだから食事だけだね」
プシュッと缶ビールを開けて言う要に横にいる絵梨も缶酎ハイ開けながら言った。
「じゃあ、私が作るよ」
ビールを口につけようとした要の動きは一瞬止まった。
「え?」
「食事なら私が作るって言ったのよ。元々自炊してたし」
「本当に!作ってくれるの!?」
「それくらいいいわよ、後二日程したら叔母さん家からまた大量の野菜届くと思うし」
驚いた表情の要に急に不安になった絵梨が横に顔を向けて問うた。
「え、嫌だった?」
「違う、まさかエリンがそんなこと言ってくれると思わなかったから驚いただけで、マジで嬉しいんだけど」
「それならよかった」
真正面を向いたまま、缶酎ハイを口にする絵梨に要は目を細めて笑った。
食事中他愛ない話をし就寝の時間になり、なぜかTシャツを剥ぎ取られたが、昼間のことが要を満足させたのかそれ以上のことはして来なかった。
ただ後ろから首を羽交締め状態で抱きしめられ横になっていた関係で絵梨は苦しさもあり意識を失うように眠った。
翌日は祭日で仕事もお休みだ。
ゆっくり出来るとその後泥のように眠っていた絵梨は朝というには陽の高いカーテンの隙間から覗く光を瞼に受けながら、意識の遠いところで玄関のチャイムの音を聞いたような気がした。
この後、身の毛がよだつ経験をするとは思わずに、、、。
要ご褒美回、、、、。
明日1話UP予定です。
よろしくお願いします。




