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全てはここから始まった〜最後には根源、断ち切らせて頂きます〜  作者: 虹乃懸橋


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9、〈鍵〉 ✩


R15指定です。

ギリギリ攻めた内容になってます(汗)


 硬い床に両手を貼り付けられ、要にのしかかられながら荒々しい口付けを受けていた時、絵梨は昔祖母との会話を思い出していた。

『ばあちゃん、白芭の〈鍵〉って結局何なの?』

『一言で言うなら呪いだな』 

 は?呪い?


 姉が事件を起こし、留置場で自死。

 立て続けに両親も事故で亡くなり、叔母に引き取られてその生活に慣れ始めた頃の年末の事だった。

 久しぶりに祖母が一緒に年を越そうと叔母夫婦の家に来ていた時の事だ。


 その日、白芭のことで今後どうするか相談したいと言う祖母は、普段仕事着としていつも着用していた白袴姿ではなく、年相応の格好をして炬燵こたつに入って蜜柑(みかん)を食べていた。 


 〈鍵〉について姉とは違う見解を述べた祖母に戸惑い、自身の右胸横の脇下近くにある紋を服の上から触る絵梨に祖母の朋恵はチラリと見た後、また蜜柑に視線を戻し一房取ると口に入れた。

『それがなければ白芭の能力も使えずただの人。娘の美鈴がそうだったようにな』


 思考が昔祖母との会話を思い出しながら、絵梨はその間にも紋が疼き、まるで点滅するように熱を発したり引いたりして奇妙な感覚がしていた。


 ただ不思議と彼との行為に嫌悪感はなく、意識が朦朧とする原因が貪るような口付けのせいなのか、紋の影響なのか判断出来なかったが、なぜか涙が込み上げてきた。

 嫌でもその存在を誇示するように熱を帯びる紋に思考は再度祖母との会話を思い出す。


『そんなにこれが大事なの?』

 絵梨がもう一度紋を触っていると、祖母は淡々と言葉を紡いだ。

『少なくとも白芭の先祖は大事にしてきた。平安時代最盛期を迎えた陰陽師が活躍していた時代に、主上に仕えていた筆頭巫女が白芭の前身だったと言われている』


 貼り付け状態のまま息苦しい合間に口を開ければ、顎を固定され要が舌の伸ばし絵梨の口の中を蹂躙し始めた。

「クフッ」

 絵梨が声にならない鼻籠る音に、要はジュルッと音を立てながら舌同士を絡めたかと思えば、クチュクチュと歯や歯茎も触ってくる。


『でも巫女って独身の女性がなるもので、結婚すると神の声も聞こえなくなったって言う話じゃん。つまり純潔を重んじていたってことでしょう。でもうちの当主は皆、結婚して子供も産んでるのに、能力がずっとあるってどういう原理なのよ?』 

『だから呪いなのだよ』

『どゆこと?』


 紋が急速に熱を帯び始め、最初感じたジリジリとした感覚が走り絵梨はとうとう涙が溢れ落ちた。

 そんな絵梨を見て要は、紋に異常があることがわかったのか、ディープな口づけで絵梨の口から流れる唾液を舐め取り、さらに口づけを深くしながら紋のある場所にそっと手を這わせるとビリッと全身が痺れるような感覚が走り、絵梨は思わず大きく目を見開いた。


『本来巫女は個々の能力者の集まりで、いつどこに産まれるか分からない神秘的な存在だった。だがある時一人の巫女が世襲制となるその血で能力を継いでいく呪いを誰かにかけられた。それが白芭家門の始まりと言われている。そのせいで巫女時代程の完璧な状態で神の声を聞くことは出来なくなり、夢でお告げを受けることになった。そこには神が不憫に思い鍵を授けることでその能力の存続を望んだ結果とも言われているけれど、それを持ってしても最盛期ほどの能力発揮することは出来なくなった。誰が何のためにこんな呪いを授けたのかは記録が残っていないから知りようがないけど、細く長く能力を継承する(すべ)が残ったことは、時の主上はそれはそれは大変喜んだと文献には残っている』


 絵梨に起こった現象に、要は気づいたのかその感覚を霧散させようと、唇から耳に向けて肌を食む様に口づけをずらしながら絵梨の服の下から手を入れて直接紋に触れた。

 ブラの上から触れる手がソフトタッチでありながら紋からビリビリする感覚は激しさを増し、胸の横にある紋からその感覚は波及し胸全体がむずむずし始めた絵梨は思わず「ああ!」と声が出てしまった。


『血で能力を受け継ぐ事と、この紋はどう関係があるの?』

『この紋は自身と〈鍵〉を結び付ける呪具だ。それと同時に能力を発揮する媒体にもなり得る。しかし全ては〈鍵〉次第。その紋も有効になるか無効になるか決まる程、その紋に白芭はある意味、()()()()()()()()()()も振り回される』


『紋自体を消すことは出来ないの?』

『今後この能力を発現させたくなければ第1の儀式を受けなければいいだけなんだ』


 絵梨は自身の体を持て余し、彼にしがみ付くように甘えれば、要は少しずつ絵梨の体から力が抜けるように奉仕し続けた。

 要に胸を揉まれながら耳元から首筋と徐々に下がって行く口づけを絵梨は自身の声とは思えないような甘い吐息が時折、口から漏れた。


 昨日再会と言うには遠い記憶の人に押し倒され、男性とそういう行為をしたことがない絵梨にとって未知の感覚に羞恥と戸惑いで一瞬思考が正常化し、まずは彼の行動を一旦止めてもらおうと「要くん」と名を呼び腕を掴んだが、それが紋の効力を上げるきっかけになったのか、要の様子が明らかに変わってしまった。


 瞳に色を帯び、彼の顔が高揚する。

「エリン」

 肩口にキスされながら要に名を呼ばれて初めて、祖母の言った()()()()()()の意味を、嫌でも体感し震え上がった。


 名を呼び合うことが紋の効力が上がったように絵梨の体が、特に下半身がズクリと(うず)き始めたのだ。

 絵梨がそうであるなら〈鍵〉である要も同様と考えるべきだ。


「かな・・!!」

 彼の名を呼ぶ声を途中で荒々しい口付けで塞がれ、そのまま体を抱き上げられ寝室に連れ込まれた。


 二人は媚薬でも盛られたように正常な感覚は過ぎ去っていた。

 ベットの上に転がされシーツの感覚を背中で感じ取り、戸惑い震える絵梨の服を要は乱暴に剥ぎ取った。

 自身の服も一心不乱に脱ぎ捨てると絵梨の右胸横にある紋をブラ越しでありながら目にして、さらに頭に霞がかかったようにぼーっとした。


 無意識に下着越しに紋に口付けると絵梨が鳴き声にも聞こえる喘ぎ声が聞こえると、要はもう我慢が出来なくなった。

 下着越しの肌のふれあいだけでは満足できなくなり、絵梨の意思も確認せずに下着すらも剥ぎ取れば、そこからは本能のままに絵梨の体に、手と舌を使って(まさぐ)り始めた。


『それでも皆儀式を受ける理由は何なの?』

『みんなこの能力に振り回せれて辟易していても、結局儀式を受けるのは単に守りたい者がいるからだ』

(守りたい者?)


『つくづく血の縛りを授けた術者には脱帽する。血が続く限りどうしたってこの能力を手放そうなんて思う者は出て来ないのだから』

 言い切った祖母を横目に絵梨は表情を固くして、祖母に言い放った。

『私は能力なんて、なくて良い』


『絵梨?』

『ばあちゃんには悪いけど、私白芭は継がないよ』

『・・・・』

『本当に優れた能力だって言うんなら、姉さんもお父さんもお母さんも(みんあ)ここに一緒にいるはずでしょう。誰もいなくなったこの状態でそんな中途半端な能力なら私はいらない!』


『絵梨』

『ごめん、ばあちゃん。ばあちゃんがどんなに白芭を大事に思って守ってきたかは知ってるつもりだけど、私はやっぱり継ぐ気にはなれないよ』

 十五歳だった絵梨はまだ物事を見渡す力が当時にはなかった。


 そんな絵梨に拒絶された祖母は一瞬悲しそうに眉を下げたが、すぐにポーカーフェイスに戻った。

『無理強いしたくて今日ここに来たわけではない。絵梨の気持ちはよくわかった。ただ真梨のことや両親のことで少しでも情報が欲しいと思えることがあった時は白芭を思い出してほしいんだ』


 冷たかったシーツも温もりと共に湿気も含み始め、長い時間一方的な奉仕の前に絵梨が(あえ)ぎ疲れ四肢に力が入らなくなった時、要に再度覆い被られていた。

 ぼーっとする思考の中、要に「入れるよ」という言葉に無意識に頷くと両足を持ち上げられ、下半身に何かが当たった。


『思い出して欲しいって、中途半端な能力で何ができるの?』

『白芭の能力はいつが一番強く発現すると思う?』

『質問ならやめてよね。いつなの、その一番強い時って?』


『〈鍵〉を受け取り、受け入れた時だ』


 次の瞬間、下半身にピリッとした痛みと圧迫感が走り、絵梨は涙を浮かべながら要の体に抱き付いた。

 そんな絵梨の様子を見ながらその先を目指す要は、初めてでもないその行為にも関わらず、前回とは違うその感覚に下半身がゾクゾクと反応した。


 時間をかけ慎重に進んだ先の行き止まりな感覚を感じた時、お互い一息付いた。

 要は溢れる汗を拭うように前髪を上げると下にいる絵梨の何かに耐えるような表情に身を屈めその頬に手を(かざ)し覗き込んだ。

「大丈夫か?」

「うん、痛いって言うより圧迫感がすごい」


 息も絶え絶えの絵梨の言葉に、要はなぜかブルッと震えて戸惑ったような声を出した。

「エリンの声は腰に響く」

「え、よくないことなの?」

 絵梨の肩口に顔を埋めて「・・・逆だな」と言った要の下半身のものの質量が増したような感覚に絵梨は驚き、え?と肩口にいる相手に顔を向けると、相手は色っぽい笑みを浮かべて横目で絵梨を見ていた。


 この沈黙が恐ろしいと感じるのは私だけだろうか?

 ダラダラと嫌な汗が出始めた。


「あの、ここで辞めるって選択肢は「ないな」」

 即答され、それでも少しの間はジッと動かなかった要だったが、甘い吐息と共に「慣れたな」と言わた後は、奴の好きなように体を弄ばれた。


 初めての快感の前に成すすべなく、(あえ)ぐことしかできなかった絵梨は、途中涙と汗と(よだれ)まみれになった。

 懇願しても離してもらえず、途中から激しく揺れるマットレスを感じる余裕もなくなり、ただただ体を揺さぶられた。


 長い間快感に翻弄され続け、要が絵梨の横で体を横たえた時には信じられないことに夕飯も食べずに夜中になっていた。

 泣きながら喘ぎ続けた疲れと喉を渇きを覚えたが、体を酷使し過ぎで絵梨はすぐに気絶するように寝ってしまった。


 その時初めて絵梨は回想夢を見た。


 見覚えのある病院の上空に立ち、見下ろした絵梨はそこが祖母が亡くなる直前まで入院していた場所だと気が付いた。

 祖母がいた病室に意識を飛ばすと体がその病室に移動して行く。


 そこには亡くなったはずの祖母がやつれた顔ではあったが、ベットの上で上体を起こしオーバーベットテーブルの上で何かを書き込んでいた。

 その横には長年祖母に仕えていた瀧田という祖母と同年代の女性が、静かに佇んでその様子を見守っていた。


 書き終わった一つの封書を瀧田に渡した祖母は、もう一通の紙に何か書き込み始めた。

「今渡した封書は5年後、親族が集まった時に開封するように弁護士に伝えておいて」

 祖母に渡された封書には【遺言書】と大きく書かれていた。


(かしこ)まりました。ではそちらは?」

「これは絵梨宛のものだ。あの子は白芭の能力はいらないと言ったが、一応保険にな」

 書き込んでいた手紙から視線を外し、横にいる瀧田に顔を向けた。


「瀧田、あの子が20歳になった時に1度あの子の元を訪ねて行ってほしい。その時にもし第1の儀式を拒否するようならこれは破棄してもらっていい」

 そう言いながら書きかけの手紙をコンコンと音を鳴らし「けれど」と会話を続けようと口を開いた時、瀧田が長年補佐をしていただけに先んじて呟いた。


「儀式を受けられた場合はそちらの封書をその場でお渡しすればよろしいですか?」

「いいや、5年後の公開に合わせてあの子に渡してやってほしい。そういう意味でもこれも弁護士に渡してほしい」


「と、いうことはその封書には〈鍵〉に関することが書かれているのですね」

 祖母はそうだと頷きながら手紙を見た。

「こんなことをしなくても〈鍵〉である彼と出会う可能性はあるが、真梨が布石を打っていなければそれも無いことだから。私は最悪のシナリオを想定をして動くしかない」


「もし真梨様が布石を打っていた場合は・・・・」

「遺言書公開前にあの子は〈鍵〉を受け取ることになるだろうね」

「それは・・・・まさか〈鍵〉があんなことだとは思っていない絵梨様は憤慨なさるかもしれませんね」


 瀧田の言葉に絵梨宛の遺言を再度書き込もうとしていた祖母は手を止めて、虚無顔になった。

「まあ、そうだろうな。私ですら一族に怒りをぶつけたくらいだからあの子はもっとだろうな」

 2人は視線を交わし、揃って弱り顔になった。


「まさか巫女の家系でありながら〈鍵〉との密通が能力の根源とは思っていないでしょうから」

「本当にふざけた能力だよ。しかも〈鍵〉との相性も床の相性だなどと私だって若い頃には思っても見なかったからな」


 持っていた万年筆を揺らしながら祖母が言えば、瀧田も困ったように眉を下げることしか出来なかった。

「〈鍵〉をお渡しする時期に5年後に設定した意図は・・・」


 滝田の言葉に祖母は目の前の書きかけの遺言書を見つめ弱々しく笑った。

「あの子には自分の思い描く人生を歩んでほしい。それでも姉や両親のことを少しでも知りたいと思えるようになっていれば儀式を必要とするようになる。でも能力開花した場合、平穏な生活を許してもらえない環境に身を置くようになる可能性がある。そうなればあの子のやりたいことも出来なくなるだろう。絵梨にはできるだけ自分のやりたいことを続けてほしい。だから今から5年間は白芭には大人しくして貰うしかない」


「5年後なら絵梨様も社会人2年目ですか」

「その時には少しは自分のことを考えられる大人になっていてくれたら、言うことないんだけどね」

 目を細め絵梨を思い浮かべているのか、愛おしそうに微笑む祖母を絵梨は呆然と見つめていた。


 祖母がそこまで自分のことを考えてくれていたことに感謝しながら、同時に白芭の呪いに憤慨した。

 祖母の言うようにこのふざけた能力に、怒りをぶつける相手がいなくなったことにも絵梨は寂しさを覚えたのだった。


 

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