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追放された宮廷調香師は、辺境の村で竜の眠りを解く――香りだけで呪いも戦争も終わらせます  作者: たむ


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第百二十三話 三日後に見るものを、昨日のままにしない

翌朝、白い石の日だった。


花粉の紙包みを三日だけ預かる。


三日後に、土へ返すか、もう少し預かるか聞く。


そう書いた札の、三日後。


リクは朝食の前に低い台の前へ行った。


白い石は、そこにある。


花粉の紙包みも、そこにある。


印ではない花弁は、少しさらに乾いて薄くなっていた。


低い仕切りは、昨日の位置から動いていない。


百番目の余白は、まだ空いている。


リクは紙包みを見つめた。


三日前は、軽いのに重かった。


今日はどうか。


軽い。


でも、三日前ほどの重さではない。


それは花粉が変わったからではなく、こちらの手が少し変わったからかもしれなかった。


「今日、土へ返す?」


リオが隣で尋ねた。


リクはすぐには答えなかった。


三日後に見る。


それは、三日前の気持ちを守るためではない。


今日の紙包みを見るためだ。


リクは紙包みの端を見た。


乾いている。


崩れてはいない。


でも、もう少し預かる理由が、昨日より薄くなっている気がした。


「土へ返してもいい気がする」


ミナが頷く。


「はい」


「でも、すぐ決めると、三日待ったから土へ返さなきゃって感じになる」


セリカが言った。


「三日後は命令ではない。確認の日だ」


リュミナが鍋の前から大きく頷く。


「漬け込み三日と書いてあっても、肉を見る」


「肉は出すな」


「見ることは大事だ」


リクは少し笑い、紙包みをもう一度見た。


「確認の日」


彼は札を書いた。


“三日後は命令ではなく、確認の日。”


その下に、


“三日後に見るものを、昨日のままにしない。”


朝食のあと、アリアンヌから手紙が届いた。


――リクへ。


――王妃の机に手紙をもう三日置くと決めた、その三日後です。


――今朝、私は手紙を見ました。


――三日前と同じ場所にあります。


――布もあります。


――銀の釦もあります。


――でも、同じではありませんでした。


――手紙の端は少し落ち着き、布は机になじみ、釦は見張りではなく印として見えるようになっていました。


――だから、私は今日、手紙を動かしません。


――三日前の怖さで置き続けるのではなく、今日見て、もう少しここに置きます。


――今日はアリアンヌ。


――王女の服は、今日は軽い飾りをつけません。忘れたのではなく、見て決めました。


リクは手紙を読んで、ほっとしたように笑った。


「姉さん、動かさなかった」


ミナが微笑む。


「はい。でも、三日前と同じではありません」


リオは今日だけの棚に札を置いた。


“三日前の怖さで置き続けるのではなく、今日見て置く。”


セリカが隣に、


“同じ場所にあっても、同じ状態とは限らない。”


と書いた。


リュミナは粥を味見しながら言った。


「昨日の鍋を今日温める時も、昨日の鍋ではあるが、今日の鍋でもある」


セリカは匙を受け取り、味を見た。


「今日は本当に薄めだな」


「見て決めた」


「よし」


昼前、白盾記録院から報告が届いた。


灰色の箱にも、三日目の確認があった。


空欄の写しを手元に置くことを認めてから、三日。


審理官はヴォルクへ尋ねた。


“この箱を、もう三日貸与し続けますか。それとも返しますか。”


ヴォルクは長く黙った。


箱を見た。


太い線を見た。


空欄の写しを見た。


そして言った。


“返したい気持ちがあります。”


審理官は問う。


“逃げたいからですか。”


ヴォルクは答えなかった。


しばらくして、


“少しは。”


さらに沈黙。


“しかし、持っていることで、持っている自分に慣れ始めています。それも危ない。”


戻り香の家は静かになった。


レインが小さく言った。


「慣れ始める危なさ」


セリカが低く頷く。


「ある」


報告は続いた。


審理官は協議し、箱は一度、白盾記録院の棚へ戻すことにした。


ただし、ヴォルクが毎朝読む言葉は残す。


“これは、私が知らない名であって、私の空欄ではない。”


箱を持たない日にも、この言葉を読む。


レインは間の棚に札を書いた。


“持っている自分に慣れ始める危なさ。”


その下に、


“箱は一度、棚へ戻す。”


セリカが足す。


“免罪ではない。”


リクは少し考えて、


“持たない日にも、言葉は読む。”


と書いた。


午後、レムリア商市から手紙が来た。


入口の砂の三日目。


男は来た。


サラ・ベルテは尋ねた。


“三日経ちました。この砂をどうしますか。”


男は紙包みを見た。


長く黙った。


そして言った。


“床には戻さないでください。”


サラは頷いた。


“捨てますか。”


男は首を横に振った。


“まだ捨てないで。でも、入口の隅ではなく、棚でいいです。”


サラが確認した。


“見える棚ですか。見えない棚ですか。”


男は少し笑った。


“聞いてくれてよかった。見えない棚で。”


リュミナが手紙を聞きながら頷いた。


「よい確認だ」


ミナも微笑む。


「場所だけでなく、見え方も聞いています」


リクは今日だけの棚に札を書いた。


“入口の隅ではなく、見えない棚で。”


その下に、


“場所だけでなく、見え方も聞く。”


夜、国王から手紙が届いた。


――リクへ。アリアンヌへ。


――三日後だった。


――私は、王妃の机の手紙を動かすべきか考えた。


――三日前の私は、今日を怖がっていた。


――今日の私は、三日前ほど怖くなかった。


――だから、怖くないから動かす、というのも違うと思った。


――アリアンヌは、今日見て、もう少し置くと決めた。


――私はそれに従ったのではない。


――その決め方を尊重した。


――今日は、スープを飲んだ人。


――追伸。二杯目は半分。三口に分けるつもりだったが、今日は二口だった。三日前の三口に縛られなかった。


リクは手紙を読み、少し笑った。


「二口」


リュミナが満足そうに頷く。


「三口に縛られない」


セリカが言った。


「二杯目が本当に自由になってきたな」


「椀は自由を教える」


「もう否定するのが難しい」


今日だけの棚に札が増えた。


“怖くないから動かす、も違う日がある。”


“決定に従うのではなく、決め方を尊重する。”


“三日前の三口に縛られない。”


夜、リクは花粉の紙包みを持った。


軽い。


とても軽い。


「土へ返す」


彼は言った。


誰も急かさなかった。


金木犀の根元、最初の花を返した場所の近くに、小さな穴を掘った。


紙包みを開く。


橙の粉が、少しだけ見えた。


風が吹けば飛びそうだった。


リクは息を止めず、ゆっくり土へ落とした。


粉は音もなく土の上に散った。


紙は空になった。


リクは言った。


「預かった。返した」


ミナが頷いた。


「はい」


リクは札を書いた。


“預かった花粉を、今日、土へ返した。”


その下に、


“確認して返した。”


白い石は、低い台に残した。


もう三日後の印ではない。


役目が終わった石。


でも、ただの石に戻る途中の石。


リクはそれを見て言った。


「石は明日見る」


リオは微笑んだ。


「はい」


その夜、リオは新しい香りを作った。


三日後を命令にしなかった朝。


同じ机に置きながら今日見て決めたアリアンヌ。


箱を一度棚へ戻した白盾記録院。


見えない棚を選んだレムリアの砂。


決め方を尊重した王。


三日前の三口に縛られなかった二杯目。


そして、確認して土へ返された花粉。


ラベルは、


“三日後に見るものを、昨日のままにしない。”


その瓶は、空になった紙包みのそばではなく、土へ返した場所が見える窓辺に置かれた。


返したことが見えるように。


香りは残る。


三日待った紙にも。


今日返した土にも。


そして、約束の日が来たからではなく、今日の目で見て、預かったものを返せる形で返した夜の静かな指先にも。

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