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追放された宮廷調香師は、辺境の村で竜の眠りを解く――香りだけで呪いも戦争も終わらせます  作者: たむ


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第百五話 三日後を忘れないために、今日を軽くする

翌朝、リクはまず花粉の紙包みを見た。


“三日だけ預かる。”


“三日後に、土へ返すか、もう少し預かるか聞く。”


札はそこにある。


紙包みも、昨日と同じように軽く置かれている。


けれど、リクは少し不安だった。


三日後。


その言葉は小さいのに、妙に未来を引っ張ってくる。


今日、何かをしなければならないわけではない。


でも、三日後に忘れないようにと思うと、今日の朝まで少し固くなる。


リクは木匙を持ち、金木犀の根元を見た。


土はまだ水を必要としていない。


今日は水をやらない。


見て決めた。


しかし、木匙を置いても、三日後の札が目に入る。


「三日後って書いたら、今日もずっと三日後のこと考えちゃうな」


リオは頷いた。


「ありますね」


ミナが言った。


「未来の約束が、今日を重くすることがあります」


リュミナが鍋を混ぜながら真剣に言った。


「夕食の献立を朝から考えすぎると、昼食が薄くなる」


セリカが少し笑う。


「お前は昼食も濃いだろう」


「だから気をつけている」


「気をつけてそれか」


リクは少し笑って、札を書いた。


“三日後を忘れないために、今日を重くしない。”


ミナがその下に、もう一枚足した。


“今日見るものは、今日見る。”


リオは紙包みのそばに小さな石を置いた。


白い、小さな石。


「これは?」


リクが尋ねる。


「三日後に見る印です。でも、今日のたびに持たなくていいように」


「石に預ける?」


「はい。少しだけ」


リクは石を見て頷いた。


「じゃあ、俺がずっと覚えてなくてもいい?」


「はい」


「忘れていい?」


ミナが微笑む。


「忘れてもよいように、印を置きます」


リクは深く息を吐いた。


その呼吸で、朝が少し軽くなった。


朝食のあと、アリアンヌから手紙が届いた。


――リクへ。


――王妃の机の手紙を、もう三日置くと決めたのに、今朝から三日後のことばかり考えていました。


――三日後にどうするのか。


――王妃の机から動かすのか。


――温室へ戻すのか。


――箱へ入れるのか。


――考えすぎて、今日の手紙が見えなくなりました。


――メリッサが、小さな銀の釦を机の端に置いてくれました。


――“三日後の印です。今日は手紙を見ましょう”と言いました。


――少し楽になりました。


――今日はアリアンヌ。


――王女の服は、釦を一つ外したままにしています。印ではありません。ただ忘れました。


リクは手紙を読み、声を出して笑った。


「ただ忘れました」


ミナも微笑んだ。


「よいですね。全部を印にしなくてもいいのです」


セリカが頷いた。


「忘れた釦まで意味にされては疲れる」


リュミナが真顔で言う。


「しかし外れた釦には注意がいる。落ちる」


「それは正しい」


今日だけの棚に札が置かれた。


“三日後の印。今日は手紙を見る。”


その隣に、


“全部を印にしない。”


さらに、リクが笑いながら、


“ただ忘れた釦。”


と書いた。


昼前、白盾記録院から報告が届いた。


ヴォルクの空欄の写しを入れた箱が、正式に運び込まれた。


箱は黒ではなく、白でもなく、灰色だった。


蓋にはこう書かれている。


“貸与。開閉は記録官立会いのもと。”


初日、ヴォルクは箱を前にして、すぐには開けられなかった。


審理官が尋ねた。


“開けますか。”


ヴォルクは答えた。


“今日は、箱があることを見ます。”


記録官は確認した。


“開けないのですか。”


ヴォルクは言った。


“開ける準備が、開ける言い訳になっている気がする。”


長い沈黙の後、彼は箱に手を置かず、ただ見た。


最後に、決められた言葉だけを読んだ。


“これは、私が知らない名であって、私の空欄ではない。”


箱は開けられなかった。


レインは報告を聞き、ゆっくり頷いた。


「今日は、箱があることを見る」


セリカが言った。


「箱を得たからといって、すぐ開ける必要はない」


ミナが続ける。


「準備が言い訳になる日もあります」


リオは間の棚に札を書いた。


“今日は、箱があることを見る。”


その下に、


“開ける準備が、開ける言い訳になる日。”


セリカはいつものように足した。


“免罪ではない。”


レインは少し震える字で、


“開けなくても、言葉は読む。”


と書いた。


午後、レムリア商市からの手紙が届いた。


入口の砂を三日だけ置くと決めたあと、サラ・ベルテは砂の紙包みの横に小さな青い石を置いたという。


三日後の印。


すると、料理長が火口の灰にも印を置こうとして、やめた。


彼は言った。


“全部に印を置くと、印の世話になる。”


サラは記録した。


――印は、忘れないために置く。支配されるために置かない。


リュミナは深く頷いた。


「印の世話」


リクが言う。


「印にも世話がいる?」


「増えすぎると、いる」


セリカが真顔で言った。


「戻り香の家も気をつけろ。札が多すぎると、札を守るために人が疲れる」


その言葉で、部屋が少し静かになった。


棚は助けになる。


でも、棚のために生きるようになってはいけない。


リオは今日だけの棚を見た。


かなり増えた札。


瓶。


紙包み。


石。


椀。


椅子。


どれも必要だった。


でも、必要だからこそ、時々軽くしなければならない。


リクは札を書いた。


“印は、忘れないため。支配されるためではない。”


その下に、


“札を守るために、人が疲れないように。”


夜、国王から手紙が届いた。


――リクへ。アリアンヌへ。


――三日後の印として、机の端に銀の釦を置いた。


――私は、それを見て安心した。


――しかし同時に、釦を見張り始めそうになった。


――釦がずれていないか。


――机の傷に近すぎないか。


――手紙から遠すぎないか。


――その時、メリッサが言った。


――“陛下、印は陛下に休んでいただくためのものです。”


――私は休むのが下手だ。


――今日は、釦を見た後、窓の外を見た。


――今日は、スープを飲んだ人。


――追伸。二杯目は半分。今日は匙を数えなかった。


リクは手紙を読み、少し笑った。


「匙、数えそうだったのかな」


リュミナが真剣に言った。


「数える誘惑は強い」


セリカが言う。


「お前は肉を数えるな」


「数えずに公平に分けるのは難しい」


「公平に多く取るな」


今日だけの棚に札が増えた。


“印は休むためのもの。”


“釦を見た後、窓の外を見る。”


“匙を数えなかった。”


夜、リクは花粉の紙包みのそばの白い石を見た。


三日後の印。


でも、今夜は三日後のことをあまり考えなかった。


石が覚えている。


札が覚えている。


リクだけが握りしめなくてもいい。


彼は石を少しだけ指で撫で、


「よろしく」


と言った。


リオはその声を、瓶にするか迷った。


けれど今日は、そのまま空気へ置いた。


代わりに作った香りには、未来を軽くするものを入れた。


三日後の印として置かれた白い石。


王妃の机の銀の釦。


ただ忘れられた釦。


開けずに見た灰色の箱。


印の世話にならないようにした料理長。


札を守るために人が疲れないようにというセリカの声。


釦を見た後、窓の外を見た王。


数えられなかった二杯目の匙。


ラベルは、


“三日後を忘れないために、今日を軽くする。”


その瓶は花粉の紙包みと白い石のそばに置かれた。


重しではなく、目印として。


香りは残る。


三日後を覚える石にも。


開けなかった箱の前で読まれた言葉にも。


そして、未来の約束を今日の胸に握りしめすぎないよう、白い石へ少し預けて窓の外を見る朝の呼吸にも。

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