2001年▲▲月
初めて見たときは、今から十二年前だろうか。
【あの家】に子供がいたことなど、知らなかった。
元々、十家を束ねる存在である篝火という人物は、『不気味』の一言につきた。
おそらく精霊を使用した能力だと思われたが理解できない。見えないものは、観測できないからだ。それに篝火という存在は、不明点が多々あった。【あの家】では、家督がすんなりと決まる。十家は世襲制ではあるが、家督と言う点において何かしら揉めるのだ。【能力】、【知的財産】、【血統】等、色々な要因を加味して決まる。吾喰家がいい例である。あそこは、【能力】重視である。苛烈な勤めに、最も向いている人が立つべきという家柄だ。他家でも、それぞれ家督相続の条件がある。
だがあそこは違う。
いつの間にか、代替わりをしている。
それに。
———前当主が突然死している。
それを当然のように受け入れている家が怖くて仕方がなかった。
だが、そんな家に【子供】がいた。
まあ、結婚していることは知っていた。
だが、それが男児であることを除けば。
女児しかいなかった家に、【異物】がいた。
それだけにとどまらなかった。
空間が、常に軋む重圧。
それだけ存在密度が濃いのだろう。
御錠である私だからこそ感じ取れる異質。
祠堂篝火と変わらない。いや、それ以上の『恐怖』を感じてしまった。
その過程で私は、見てしまった。
急に、彼の脚がねじ切れる場面を。
何が起きたのか理解できなかったが、それ以上に理解できないことがおきた。
あっけにとられた私を他所にねじ切れた脚をなんでもないかのようにつなげて歩いている子供がいた。
悲鳴を上げない。
痛がるそぶりもない。
まるで悪戯にあったかのようなため息。
———あれは、人間ではない。
だからこそ、兎束の暴走をあえて止めなかった。
いや、背を押したまである。それだけ、私は怖かった。
代償は、私と私の一族諸々となったが。
本来であれば、あの日、こいつは死んでいるはずだった。
だが、生きている。
刑務所の中で、死んだように生きながらえた私。
人間として扱われなくなった私。
死ぬよりもつらい、永劫の中で私は堕ちていった。




