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2013年5月 Part6

 0時を過ぎた頃、僕は吾喰の人たちに事情を説明した。

 佳澄さんの眉間には青筋(『はぁ⁉』)が浮かび上がっていたが見なかったことにした。

 吾喰のご両親は、二人とも考えこんでいた。

 そうだよな。

 原因と結果を考えると、これからどうすれば———。

 「今日、あなたは安静にしていなさい。待機していて」

 僕の義母である花南(かなん)さんが、おかしなことを言っていた。

 いや、考えるべきことは———。

 「そうだぞ、今日の見回りは私達が入るから」

 義父である頚城(くびき)さんが同調するように言ってきた。

 「いや、違うって」

 考えるべきは、僕の体じゃなく———。

 「兄さん。私も両親に賛成です」

 佳澄さんまでもおかしなことを言い始めた。

 それに。

 「どうやって収めるか、方向性とか掴んでます?」

 「ないわ。案があるなら教えて」

 ノープラン。

 ここの家系は脳筋か⁉

 まあ、分業するといのも手ではある。

 なるほど。

 だけどね?

 「ちょっと、地元の『()()()()』に行くから」

 そう言うと、佳澄さんと養父母(りょうしん)はそろって顔をしかめた。

 まあ、そうだよね。

 だからこそ譲れない。

 「ここにいる人たちだと、嘘は見抜けないでしょ?」

 重要な部分であり、駆け引きできるかだ。

 良くも悪くも、ここにいる人は『善人』だから。

 余談だけど、頚城さんは愛妻家であり娘の佳澄さんを溺愛している。表情には出さないけれど。

 ちなみに奥さんである花南さんに対して、ずっと頭が上がらない。あげられない。

 それと頚城さんは、週末、絶対に外食するというルールを設けている。

 しかも、僕みたいな外物もメイドも一緒に、だ。

 夜の巡回は持ち回り制だが、金曜日に関して言えば、分家の人とも外食している。割と本家だろうが分家だろうが距離の近いところが吾喰のいいところだと思う。

 まあ、そこにつけこんだ八木森家もいたが、今はもう■■されて潰れた。

 昔の話だ。忘れよう。

 だからこそ、ここの使用人の人達はかなり好印象でご両親を慕っている。

 仕事をするときはしっかりこなし、(元)家長として全員の指揮を高めることができる人だ。

 ………元だけど。

 ちなみに家長の座が佳澄さんに移ってからもこのルールは定着しており、この屋敷に出入りしている人たちは全員、家人として扱われる。時々、佳澄さんが暴走して暴れまわることもあったが、『お嬢様だから』というよくわからない理由で、全員ニコニコしながら屋敷の掃除をしていた。

 ただし、燎火さんは別だ。

 唯一、佳澄さんの暴走を止められる人。

 目的完遂率が最も高い優秀(?)な使用人だ。

 【能力】は不明だけど、異常な身体能力、思考加速、殺気に自動応答する反射。

 人間でありながら、人間を止やめてしまった人。

 あえて言うなら、現代によみがえった【暗殺者(さつじんき)】だろう。

 出自や経歴がわからない人でもある。

 怪しさ満点ではあるが、害意はない。

 燎火さんが自発的に動くとき、大体は僕たちを守るときだ。

 口数は皆無に近く、周りの使用人からも怖がられていた………ように思う。

 今では、仕事に慣れたのか同じ使用人達から、ただの『すごい人』という地位に定着した。

 すごい人ではあるんだが………。

 なぜか、僕のことになるといろいろと歯止めが効かなくなる時がある。

 なんでも、今日、僕が負傷したことを聞いた時に屋敷から飛び出して『()()()()』で学校まで来ていたらしい。しかもお昼前に到着していたとのこと。葵さんと僕が話をしている最中だったから遠方で見ていた、と。

 あくまで同僚の使用人談である。

 電車で20分もかかる距離を自分の脚で来る人は、ねえ?

 しかも脇に抱えられた同僚メイドの口ぶりからして電車の走行速度とほぼ同じだったらしい。電車と並走して駆け抜けるから生きた心地がしなかった、と言っていた。

 アメコミのようなフィジカルだ。

 ………いろいろ見てきた僕だから『燎火さん』ならやりそう、と思える。

 この話も置いておいて。

 「僕と燎火さんで『たまり場』に向かうから。佳澄さんは、いつも通り街の巡回を頼むよ。頚城さんと花南さんは、準緊急事態として他家との協力・連携をいつでもできるように話を通しておいてください」

 全員、渋い顔をしていた。

 最善なのを理解して。

 「………わかった」

 意外にも、最後まで粘るであろうと思っていた佳澄さんが最初に折れた。

 「燎火さんが一緒なら。………納得はできないけれど」

 妙な言い回しだ。

 そう思っていると、いつの間にか僕の背後に燎火さんが立っていた。

 この人、気配がないから心臓に悪い。

 「燎火さん、聞いていたと思うけど———」

 そう言いかけたとき、手で言葉を制された。

 言わなくていい、とのことだ。

 そして、三歩後ろに下がると。

 

 消えた。

 

 蜃気楼をみていたのかのように。

 空気に溶け込むかのように。

 初めから存在していなかったかのように。

 おそらく、準備してきてくれるのだろう。

 あとは各々の行動に任せて、吾喰家のミーティングを終えた。


 

 


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