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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第52話 〜二度目の誘拐現場に遭遇です〜

新年明けまして、おめでとうございます。

十識ミトです。

12月の下旬から休みをさせていただいたので、これからまた時間が出来次第、投稿していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 俺は二人を見ながら宣言するが、そこで待ったを掛けられた。


「ちょっと待って、お兄ちゃん」


 さっきまであんなに俺をせっつくように、助ける様に促していたのに突然の百合華からの制止に俺は出鼻を挫かれる。


「どうしたんだ、百合華」

「助けに行くのは賛成なんだけど、どうやって?」


 百合華は俺に尋ねながら、俺の後ろにある地面に目を向ける。

 俺も首だけを後ろに向けようとするように動かすが、人体の限界として途中で止まってしまうが。


「確かにそうですね。既に入り口は閉じられていますし」


 そう、男達が降りていった階段の入り口は最後の一人が潜り抜けた途端、その入り口が最初から無かったかのように元通りの地面になっていた。


「それなら安心しろ。開け方の方法は、既に把握済みだ」

「「えっ!」」


 二人が、「いつの間に!?」という視線を向けてくる。


「さっきの奴等が入り口を開けた時に、こっそりやり方を見させてもらったんだ」

「あの一瞬でですかっ!?」


 まあな、と何て事ないように身振りで返す。


「そう言えば、お兄ちゃんって昔から見ただけである程度は真似られるよね」

「そ、そうなんですか?」


 エルシャは信じられないものでも見るかのように百合華に訊ねる。


「うん」

「でも、どうやって」

「それなら、やり方は簡単だ」


 俺は実践して見せる前に、さっきの階段の開ける原理を教える事にする。


「この世界で一番簡単な魔方陣は何か知ってるか?」


 エルシャは分からないようだが、百合華は「あっ」と声を上げた。


「百合華は分かったようだな」

「うん」

「どういう事ですか?」


 理解が追い付かないのか、俺達に聞いてくる。


「こういう事だよ」


 俺は地面を土属性魔術で操り、簡易的な剣を造り、それでマンホールの蓋を線と線で繋いでいくと一つの図形になる。


「三角形、ですか?」

「そうだ。この図形が、世界で一番簡単な魔方陣何だ。そして、ここに籠められている効果は三つ『偽装・隠蔽・人払い』だ」


 あの男達はこの階段の入り口を偽装で騙し、隠蔽で隠し、人払いで近づけさせない様にして隠し通していた。

 それも、周りから悟られない様に周到にだ。


「なるほど、だから私達も最初は気付かなかったのですね」

「そう言うこと」


 エルシャもやっと気が付いたのか、俺は頷く。


「だから、こうやれば開く」


 俺は三つあるマンホールの蓋の中心に立ち、正面の蓋から反時計回りに魔力を流し込んでいく―――――すると。


 ゴゴゴゴゴッ


 小さな地響きを立てて、再びあの入り口が姿を現した。


「「本当に開いた」」


 百合華とエルシャが驚いた顔をして、入り口を覗き込みながら呟く。


「それじゃあ、降りるとするか」

「はい」

「うん」



      〜・・・〜      〜・・・〜



 降り始めて少しすると、入り口が閉じられ一寸先まで見通せない暗闇に包まれる。


「これは危険ですね」

「そうですね。何か光源になるものが―――」


 あれば良いんだけど、と百合華が言おうとした瞬間、すぐ側から光が灯る。


「きゃっ」

「ナニッ!?」


 小さく悲鳴を上げた二人が光源に視線を向けると


「あ、悪い」


 俺は暗くなったことで反射的に『光源球(ライトボール)』を使ってしまい、それに驚いてしまった二人に謝罪する。


「も、もう、驚かさないでよっ」

「本当です。ビックリしました」

「悪かったよ。次は一言言ってからやるから。それより」


 俺は視線を降り階段の先に向ける。


「この先にアイツ等と、アイツ等のアジトなりがあるはずだ」


 先はまだまだ続いていて、微かにだが人工の光が見えている。そこに向かって『光源球』を浮かせながら進んでいく。


「終着点は、まだ先のようですね」

「それに良く聴くと、何かが流れる音が聴こえてる気がする」

「流れる音?」


 不思議に思い耳を澄ませるが、聴き取ることは出来ず、魔力で聴覚を強化すると確かに、微かにだが液体が流れる音のような物が聴き取れる。


「確かに、何か聴こえるな」

「え? 私は聴こえないですけど」

「聴覚を魔力強化すれば聴こえるよ」


 エルシャが俺達が聴こえているのに、自分が聴こえていない事に戸惑っていると、百合華が優しく教えてやる。


「魔力強化ですか?」

「うん。そうすれば聴こえる筈だよ」

「分かりました。やってみます」


 エルシャは魔力を身体の中で循環させ、聴覚を強化し、暫し精神集中する。


「………………、………………あっ、聴こえました!! 確かに、何かが流れる音がします」

「聴こえたようだな」

「はい。でも、百合華さんはよくこんな小さな音を聴き取れましたね」

「まぁ、常に最低限の魔力強化をしてるからね。それでかな。それと、私の事は百合華で良いよ、エルシャさんはお兄ちゃんと同じ年齢だよね? だからエルシャさん? エルシャちゃん? またはエルちゃん? エルシャお姉さん? どれがいいかな」

「………え、えっと。私は今年で十六ですけど」


 突然の複数の自分の中の呼び名に戸惑い、俺はそれに苦笑する。


「いきなりそんな言ったって、エルシャが戸惑うだけだぞ。まあだけど、呼び名は相手に不快感を与えなければ何でも良いんじゃないか? それと、俺は十七だ」

「そうかな? だったら、エルシャちゃんでどう?」

「えっと、別に構いませんけど」

「だったらエルシャちゃんって呼ばせてもらうね」


 百合華は自分が気に入る呼び名が決まったからなのか、少し上機嫌になる。


「話はそこまでにして、先を急ぐぞ。まだまだ先は長いんだからな」

「あ、そうだった」


 テヘッ、と頭を自分でこずきあざとい感じで返す。


「ほら、さっさと行くぞ。足元には気をつけろよ」



      〜・・・〜      〜・・・〜



 階段を降り始めて既に数分、もしくは数十分は経ち、微かな光が射し込む出入り口が目前までやって来た。

 俺は振り返り、二人に頷くと百合華とエルシャも頷き返してくる。

 一旦『光源球』を消し、僅かな隙間が開いていたそこそこの重そうな扉を少しずつ開けていく。

 ある程度開いたら、その隙間から外の気配と様子を探る。


「………………どうやら、誰も居ないようだな」

「みたいですね」


 ギィィィィ、と扉を開け放ち、俺達は外に出るとそこは――――。


「下水道、か」

「だね」


 降りてくる時の感覚から、それなりの深さがあったから地下に向かって行っているのではと考えていたが、下水道に続いているとは。


「タクトさん。それで、あの人達は何処に?」

「ちょっと待っててくれ」


 俺は未だに持っていた簡易剣を地面に突き刺して魔術を発動する。


「『地動探査(アース・ソナー)』」


 振動と言えば、空気を震わせで発せられる『音』が一番に上げられると思うが、振動を発しているのは他にもあり、人間何かの生物の身体からだったり、生物が移動する際に踏む地面からだったりする。

 この魔術は、その地面からの微かな振動を広範囲から情報として収集し、選別する。


「…………………、居た」

「どっちですか」

「あっちを真っ直ぐ進んで、二本目の曲がり角を曲がった先に居る筈だ」

「そんな遠くのものも分かるの?」

「まあな」


 俺達は、俺が示した方向に向けて歩いていく。一本道で人工の魔晶灯のお蔭で迷うことはないが、未だにさっきの男達の姿が見付けれない。


「お兄ちゃん、本当にこっちで合ってるの?」

「その筈だ」


 周りが薄暗い事から時間の感覚がズレて狂い始めているのか、どれ程歩き続けたのか定かではないが、それだけ歩いても一向に男達の後ろ姿も、アジト(終着点)にも辿り着けていない。

 所々で印や『地動探査』を使っているから多少の遅れは仕方ないと思うが。

 その時だった。


「…………………………おっ、どうやら止まったようだぞ」

「本当ですか!」

「ああ、急ぐぞ」


 足音を立てないように細心の注意をしながら現場に急行する。

 幾つもの曲がり角を右に左に曲がり、男達が止まった位置に辿り着くが。


「……………何処にも、居ないよ?」

「おっかしいな。確かに、この辺りで止まったと思ったんだが」

「もしかして、ここへの入り口の階段を隠していたのと同じような仕掛けでもあるのでしょうか」


 あり得るな、と考え辺りをくまなく探す。


「あっ、タクトさん。これ」


 何かを発見したエルシャが俺を呼ぶ。


「どうした」

「ここに、何かを嵌める穴の様なものがあるんですけど、これって」


 エルシャが指差すそこには、確かに手のひらサイズのメダルかコインを嵌めるための窪みがあった。

 つまりはだ。


「ここから先に行くには、ここに嵌まるコインかメダルが必要ってことか」

「そんな、ここまで来たのに」


 百合華が悲痛な顔で落ち込んでいると、妹に甘い自覚のある俺は何とかしてやりたいと考えてしまい、今まで使用を控えていた異能を使う事を即座に決める。

 だが、それを成すには、ここにはそれを知らない存在が居る。エルシャだ。


「百合華、大丈夫だ。俺が何とかする」

「本当?」

「当たり前だろう。だが、その前に…………」


 俺はエルシャに視線を向ける。エルシャは突然、自分を見てくる俺に首を傾げる。


「どうしたんですか?」

「エルシャ、これから俺がやる事は絶対に他言無用だ。良いな?」

「それは構いませんけど、一体」


 何を、と言い切る前に俺は壁に手を向けて異能を行使する。


「我が進むべき道を阻みしものよ、消え去り、その道を差し出せ『幻想具現オーバー・ザ・リライト』」

「タクトさん、何をやって、って………………えっ!」


 今まで何も無かった筈のそこに、突然道が現れた。

 その様はまるで、今まで閉じられていた 道という大きな口が開いたか、もしくはその道を隠し阻んでいたモノが消え去ったかのようだった。


「………………」


 理解不能な状況にエルシャは思考をフリーズさせて、ただ突っ立って居るだけになってしまった。

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