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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第51話 〜闇は、何処にでもある〜

こんばんは。お久しぶりです、十識ミトです。

この度は、執筆の時間と内容の構想がなかなか思いつかなかったので、このような時間の投稿となってしまいました。

また、年末は仕事で忙しくなりそうで、投稿が上手くいかなくなり、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、どうかご了承願います。

出来るだけ、仕事の合間に書いて、早めの更新を心掛けたいと思いますのでよろしくお願いします。

では、今回のお話も楽しんで読んでみてください。

 俺達が『コルーナ魔術学園』に編入する日は一ヶ月後と言われているが未だに連絡が来ておらず、もし王宮から連絡が来たら冒険者ギルドけいゆうで俺達の下に伝わるようにしてもらっている。

 知らせが来るまでのその間は予定なしの状態であり、特にやることも、差し迫った事も無いので前回の続きとして街を散策することにした。


「うわ〜、人がいっぱい。何か、軽く酔いそう」

「百合華はまだ、この街に来てそんな経ってないから、慣れるまで掛かるか」

「たぶん、大丈夫だと思うけど、こんな人通りが多い場所はあまり来たりしないからね。それにしても」


 百合華は一旦言葉を切り、周りに視線を向けて、鼻を鳴らしながら臭いを嗅ぐ。


「どうしたんだ?」


 百合華の突然の行動に俺は訝しむ。


「うん。何て言うか、露店の食べ物や人の臭いはするんだけど、それ以外は特に気にならないかなって」

「あ〜」


 その台詞に俺は納得してしまう。

 この世界は地球で言うところの中世と同等か少し上くらいの文化レベルでしかないが、この世界には魔術具(マジックアイテム)があるので、生活レベルとしては近代寄りの中世レベルと言ったところか。

 日本でよく読んでいたラノベによくある設定の時代ではあるが、どうやらこの世界は少々それとは違うようだ。


 つまりは、臭いがそこまで気にならないのだ。


 よく読んでいたラノベの中では、鼻に突く刺激的な臭いが至る所からし、疫病蔓延待った無しの状況。

 衛生環境が良くないから、体調を崩しやすい人が多く居るなどだ。

 だが、どうもこの世界はそれとは噛み合わない。

 その理由が、整備された衛生環境による、汚臭がしない事だ。

 それだけ、気にしているのだろう。

 まあ、それでも稀に脇道から刺激臭がしてきて、「うっ!?」となってしまうが。


「う〜ん。魔術具が普及しているとは言っても、やっぱり完全ではないか」

「普通、生活環境を整えるなら、まずは衛生面から入るものだからね」

「ここまで出来てるなら、あとはそこに暮らす人達の意識次第じゃないかな」


 俺達の世界では、衛生面をきっちりしないと疫病が蔓延し、多くの人が死ぬことになる事が知られているので、それに順する事柄は政府からしっかりした支援がされている。


「これが普通じゃないんですか?」

「いや、まあ、普通っちゃ普通なんだが。ちゃんと衛生環境を気にしてんだな」

「そうなんですか」


 俺と百合華の話にエルシャが入ってきて、話し合っていると、百合華がふと呟く。


「お兄ちゃんなら何とかできるんじゃないかな?」

「俺が?」

「うん。そういうの考えるのって、結構得意だったじゃん」

「いやいや。そんなでもないって」


 突然の無茶ぶりに手を横に振って否定する。


「え〜、そうかな」


 百合華はぶう垂れながらもトコトコと周りを観ながら歩いていると、


「……………ん?」


 足を止めて、左側にある路地裏を真っ直ぐに見詰める。


「どうした?」

「あっちから、善くない感じがする」


 百合華はあっちと路地裏の奥に指を指して示す。

 俺とエルシャは百合華が示す方を覗き込むが、奥の方は薄暗くジメジメした陰気な場所で、あまり入っていきたいとは思わない場所だった。


「この奥からか?」

「うん」


 俺達は顔を見合せて、どうするか話し合う。


「行った方が良いのか?」

「……………多分?」

「どうしましょうか」


 悩んだ末に、俺達は百合華の誘導で路地裏を進んでいく事になった。

 どうせ、急ぎの用事は無いのだからと、探検する気持ちで行くことにした。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 数分か数十分は歩いただろうか。暗く、大通りからどんどんと離れていっている事から時間の感覚がズレていく感覚に陥っていく。


「ううっ………ここまで来ると、臭いがさらにキツくなるな」

「ですね。これが俗に言う、鼻が曲がるというやつですかね」

「だな。百合華、大丈夫か?」

「……………………………お兄ちゃん」

「どうした? 何かあったか?」


 百合華は俺を振り向き、口を開く。


「―――――臭い!!!!」


 ガクッ、と膝が崩れるかと思った。


「………は、はは。まぁ、ここまで何の対処もしないで来たからな。仕方ない、ちょっと待ってくれ」


 俺はそう言って、魔術を発動する。


「『断空之球渦(エアーズ・スフィア)』」


 魔力が薄く広がり、緩やかな風を起こした瞬間、今まで感じていた臭いが感じられなくなった。


「あれ? 臭いが無くなった!?」

「あっ! 本当です!」


 二人は唐突に起きた変化に驚いていた。


「お兄ちゃん! コレなに!?」

「コレはな、俺の考えたオリジナル魔術で、『断空之球渦』って言うんだ。この中にいる間は外からの影響を受け付けない風の防壁が張られて、例え火の中水の中、灼熱の火山や極寒の吹雪の中だろうと完全にシャットアウト出来る優れものだ」

「スゴッ!! お兄ちゃん、そんなのまで作っていたの!?」

「あり得ないくらいの優用性が高い魔術ですね」


 自慢気に自分が考えた魔術の説明をすれば、百合華とエルシャが驚愕と称賛の声を上げる。

 それに気を良くしていると、はっと、ここに居る理由を思い出す。


「っと、いけない。俺達はこの先に用があるんだったな」

「あっ、そうだった」


 という訳で、臭いが気にならなくなった事で、俺達はさらに奥へと向かっていく。途中曲がり角を右に左に曲がり、ようやく終着点に着いた。


「うん。ここだよ」

「ここが?」


 俺は周りを見回し、コレといった何かがある風に見えないその場所を観察する。

 幾つも重ねられた大小の木箱。散乱するお酒のビン。三方向を建物に遮られ、頭上には青空が広がり、足元には三つのマンホールの蓋のようなもの。


「何処か、変なところがあるのか?」

「う〜ん? 確かに、引っ掛かるんだけどなぁ〜」

「もしかして、気のせいだったりしませんか?」


 そうかもしれないな、と返そうとしたその時。


「――――――、――――――」

「―――、――――――――――」


 遠くの方から何人かの話し声と、こちらに向かってくる足音がしてくる。


「しっ、誰か来る」


 二人に向かって静かにするように促し、瞬時に何処かに隠れる所は無いか探すが、あるのはマンホールと数個積み上がった木箱だけ。

 つまりは、隠れる所がない。と、来たら、


「二人とも、俺の近くに寄れ」

「うん」

「分かりました」


 百合華とエルシャは反論する事無く、指示通りに俺の側に寄り、それを確認してから魔術を発動する。


「『迷彩之衣(インビジブル・コート)』」


 魔術が俺達の身体を包み込むと、次第に身体の色彩が薄れ、終いには周りの風景に溶け込むかのように同化する。


「な、何ですか!? これ!」

「私たちの身体が………!」

「二人とも、安心してくれ。これも俺の魔術だから」


 突然自分達の身体が消えていった事に驚く二人を宥める様に優しく伝える。


「こ、これが魔術?」

「お、お兄ちゃん。これって、もしかしなくても………」


 エルシャはどんな原理でやっているのか理解出来ないようだが、百合華の方は何を元にしてやっているのか分かったようで、驚いた顔をしていた。

 光学迷彩と呼ばれる、未だ実用的な開発がされていない技術であったが、ラノベでは幾度と無く出てきたものではある。


「話は後だ。どうやらお出ましのようだぞ」


 そこでふと、俺は何で隠れているんだろうと考えてしまったが、やって来た人物達と、持っているモノを見て心の底から安堵し、過去の自分を称賛する。


(マジでナイス判断だぜ、過去の俺)


 やって来たのは見るからに普通じゃない雰囲気の、まさしく闇に生きる者と言った風貌をしていた六人の男達。粗野で浅黒く焼けた筋骨隆々でその男達が幾つもの布袋を抱えてやって来る所だった。


(タクトさん。彼らは、一体?)

(分からない。だが、普通の一般人ではないだろうな)


 エルシャは状況的に小声の方が良いと考えたのか、小さな囁き声で話しかけてくるので、俺もそれに合わせる。


(それで、お兄ちゃん。どうするの?)

(ここは少し、様子見をした方が良いだろうな。アイツ等はこっちを視認出来ないから)


 という訳で、俺達は少しの間静観することにし、その男達が悪事を働いているのであれば、アジトまで付いていって潰すか、確認出来次第この場で潰してアジトを吐かせるか判断することにした。

 その時だった。


「…………っ、……………っ…………………」


 何か、くぐもった音が男達が持っている袋の中から聞こえてきた。


(おい、今の)

(うん。何か、聞こえたね)

(確かに。あ、見てください)


 エルシャは男達が持っている袋の一つを指を指して示す。

 その袋は、モゾモゾと蠢くかのように動いている。それはまるで、苦しさから逃れようともがいているようだった。

 それに気づいた動く袋を担いでいた男は不快げに舌打ちする。


「チッ、もう気が付きやがった」

「おい、さっさと行くぞ」

「待ってくれ、こ(・)の(・)ガ(・)キ(・)が目を覚ましちまったから、また少し寝かせる」

「時間は無いんだ。急げよ」

「そんなかかんねえよ」


 男達の会話から、こいつらが悪事に加担していることは分かった。そして恐らく、ここに居る男達が担いでいる袋は全部で八つ、その全てに人が入っている。

 大きさからして、成人ではなく十歳前後の子供である可能性が高い。

 そう推察しながら観察していると、六人いる男達の内の一人が自分が担いでいた――――目が覚めてもがいている人間が入っている袋を地面に降ろし、袋の口を開け、中に入っている存在の頭だけを出させる。袋の中から出てきたのは、年端もいかない男の子だった。

 突然、暗い袋の中から光に溢れる外に頭だけとはいえ出たことで、目が眩んで上手く見ることが出来ずにいた所に、男が懐から布切れを取り出し、男の子に嗅がせる様に顔に、特に鼻に近づけさせる。

 すると、先程までモゾモゾと動いていた男の子の動きが止まり、再び意識を失った。

 それを確認した男は子供を袋に戻し担ぎ直す。


「行くぞ」


 おそらく、この男達のリーダー格の男が後ろの五人に言い、三つあるマンホールの蓋の中心に立ち、地面に魔力を流し込むところを観る。

 次の瞬間、


 ゴゴゴゴゴッ


 と、音を立てて男の目の前の地面に地下に降りていく為の階段が現れた。


(おいおい、そんな仕掛けがあったのかよ)


 流石の俺も、そんな予想外な仕掛けに唖然としていると、袋を担いだ男達が階段を降りていく。

 俺はそれを見送っていると、両隣から声がかかった。


(追いかけよう、お兄ちゃん!)

(そうですね。これは見過ごせません)


 エルシャと百合華が今にも後を追いかけそうだったので、一旦宥める。


(落ち着け、二人共)

(でも、このままじゃあの男の子達がっ!)


 百合華が食い下がろうとして来るが、俺は分かっていると頷く。

 俺だって、この件は見過ごせない。

 俺はけして、聖人君子ではない。

 正義の味方でも向こう見ずな無鉄砲でもない。


「もう、普通に話しても大丈夫だな」

「お兄ちゃん、どうして追いかけなかったの!?」


 百合華が俺の何もしなかった事に食って掛かってくる。

 それを俺は手で止める。


「まぁ、落ち着け」

「落ち着いていられないよ! あんなの見せられて、ここでじっとしてられないよ!!」

「だが、あのまま突っ込んだら、確実に面倒になる」

「……………どういう事?」


 百合華がうろんな視線を向けてくる。それから反らすように、男達が降りていった後に元通りになった階段があった地面を観る。


「さっきの地面に階段が現れた仕掛けだが、罠があることは確実だ」

「………………」

「それを、何の対策もしないで踏み込めば厄介な面倒事があるに決まっている」


 そう、あの時チラッと仕掛けを覗いた限り、不用意に踏み込めば警報が鳴って侵入バレる。

 何故それが分かったのかというと、俺の瞳に魔力を込める事でそこにある魔力の流れを読み解く事が出来る。それで分かったのだ。


「…………でも、このままじゃ」

「分かってるって、だから――――」


 俺は地面に膝をつき、手を向ける。


「だから――――――こうするのさ!!」


 ゴオオオオオオオオッ


 地面に魔力を撃ち込む。


「こ、この魔力は………!?」

「い、一体何を…………」


 いきなりの魔力行使に二人が驚いていると、


「…………………うん。ま、こんなもんか」


 作業が終わった俺は、ズボンに付いた汚れを落としながら立ち上がる。


「何をしたんですか?」

「そりゃ勿論、仕掛けを壊したんだよ」

「それじゃあ!!」


 百合華は歓喜の表情を浮かべる。


「ああ。そんじゃ、行くか」

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