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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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埋まらない溝、そしてブリタニアへ


「おいカース、どうした? 急に赤い顔して硬直し(かたまっ)ちまってよぉ。頭にカモメの糞でも落ちてきたか?」


通りすがりの海賊が不思議そうに声をかけてくるが、今の僕には「な、なんでもありません!」と裏返ったソプラノで答えるのが精一杯だった。

顔が耳の裏まで熱い。


((『現代日本』……。なんて恐ろしい、倫理観の崩壊した世界なんだ……。ま、まさか……!みんな、ジュリアスみたいにモラルが狂い散らかしているのか……!?))

『だから!それはただの偏見だし、全然違うって言ってるでしょ!?ああ、もう!これだから純潔主義に染まった貴族のお坊ちゃんは……!』


脳内の『私』がどれだけ必死に現代の常識を並べて弁明しても、僕の受けたカルチャーショックはそう簡単に癒えそうになかった。

お互いが持つ『結婚・恋愛観のあまりの格差』に、脳内で盛大に絶望し、激しく落ち込む一人と一魂。

大真面目にコントのような脳内会議を繰り広げている間にも、私掠船は白い波を豪快に蹴立てて突き進む。

はるか前方の深い霧の向こうから、ついにブリタニア諸王国の、険しくも荘厳な海岸線がその姿を現そうとしていた。


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