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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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船上の天使


最初は、ハッタリが見抜かれて奴隷市場行きか、さもなくば不遜な態度を咎められて海の藻屑か——。

そんな最悪の結末すら覚悟して乗り込んだ私掠船での旅だったけれど――。

蓋を開けてみれば、それは僕の想定を遥かに超えてエキサイティングで、驚くほど楽しいものだった。


『ちょっとカース、あなた環境に適応するの早すぎない!?さっきから信じられない手つきで、玄人プロ顔負けの速度と精確さでロープ結んでるんだけど!?』

((ふふん!カストラートを舐めないでよ、『ミーナ』。前世のアウトドアの知識と、細くしなやかな指、日々のレッスンやステージで鍛え上げられた体幹があれば、船上の雑用なんてお手の物さ!))


脳内の『私』の記憶をフル活用し、複雑なロープワークや揺れる船上でのデッキ掃除、さらには限られた保存食材を使った『前世仕込みの美味いまかない作り』まで率先して手伝ううちに、僕はあっという間に船の仕事に馴染んでいった。

何せ、外見は儚げで可憐な『没落貴族の薄幸の美少年』なのに、中身はフットワークの軽い現代日本の若者である。

その凄まじいギャップに、最初は僕を冷やかすつもりだった荒くれ者たちも、テキパキと無駄なく的確に動き、気働きもできる僕を『度胸と根性のある見どころ抜群のガキ』と認めざるを得なかったようだ。

こうして、僕の逃亡劇は皮肉なことに、まさに順風満帆のスタートを切った。

そして、何よりも想定外だったのは。

この凶暴な私掠船を率いる絶対的な頭領――キャプテン・スカロが、僕のことをいたくお気に召してしまったことだった。


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