脳内会議:音大生の国家級プレゼン
「女王陛下に取次げ、だと……?」
船長の金色の目が、わずかに細められた。
目の前の小柄な少年が、命乞いのハッタリや冗談を言っている目ではないと気づいたのだろう。
『いいわよカース、その調子!ブリタニアの私掠船はね、表向きは無法者だけど、裏ではブリタニア女王から直々に「私掠免許」を貰って敵国を襲っている、国家お抱えの実行部隊なのよ!つまり彼らにとって、女王陛下は絶対的な雇い主であり、忠誠を誓うべきボス!』
((ああ!なら、僕がただの無力な亡命貴族じゃなくて、帝国を揺るがす『特級の外交カード』だって理解させれば……勝機はある!))
僕は一歩前へと踏み出した。
潮風に負けない、甲板の海賊たち全員の鼓膜へ響き渡るような朗々とした美しい声で告げる。
「僕は『SMPC音楽院』のカース・ディ・トラッド。大陸を揺るがす『権天使』の筆頭だ。僕の実家であるトラッド辺境伯がなぜ無血で帝国軍を引き入れたのか、そして帝国が次にどの国を狙っているのか……。そのすべての内情を、僕は知っている」
ふっと笑みを深くし、冷徹な外交官のように船長を睨み返す。
「この情報が、大陸の覇権を狙う帝国を牽制したいブリタニアの女王陛下にとって、どれほどの価値を持つことか……。ただの海の荒くれ者ではない、敏腕商人の君たちならば、僕を誰に売るべきか、理解できるだろう?」
静まり返る甲板。
張り詰めた沈黙の中、船長はしばらく品定めするように僕を睨みつけていたが――。
やがて、我慢しきれないといった様子で腹を抱えて大爆笑した。
「ギャハハハハハ!こいつぁ面白ぇ!たかが歌が上手いだけの、温室育ちのガキかと思えば……。とんでもねぇ大悪党を拾っちまったもんだ!!」
船長は弄んでいた愛用のサーベルを音を立てて鞘に収めると、不敵な笑みを浮かべて僕の肩をバシバシと豪快に叩いた。
「いいだろう、カース。お前のその大ボラ、ブリタニアの女王陛下が買い取るか、それともお前が稀代の詐欺師として海の藻屑になるか……。俺たちが特等席で見届けてやるぜ。野郎ども、面舵一杯だ!霧のブリタニアへ向けて舵を切れ!」
「「「ウオオオオオッ!!」」」
地鳴りのような歓声を上げる荒くれ者たち。
こうして僕は、大陸の追っ手から完全に逃れ、次なる戦いの舞台――霧深き孤高の島国『ブリタニア諸王国』へと向かうチケットを、自らのハッタリと覚悟でもぎ取ったのだった。
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