脳内会議:強烈な発破
父上との緊迫した交渉を終え、自室に戻った僕は、そのまま泥のようにベッドへと倒れ込んだ。
「はぁー……緊張した。心臓止まるかと思った……」
まずは人生を切り開くための大きな一歩を踏み出せたわけだけど、肝心なのはここからだ。
いくらやる気があっても、今の僕は『声が良いだけの8歳の男の子』に過ぎない。
そんな僕の脳内で、『音大生の私』が腕を組んで仁王立ちした。
『ちょっとカース!交渉成立はいいけど、ここからが本当の地獄よ? 音楽院の受験を舐めないで!』
((わ、分かってるよ。でも僕には君の知識があるし、楽典とか聴音の筆記試験なら楽勝でしょ?))
僕の楽観的見通しに、『私』はフッと鼻で笑った。
『甘ーーいッ!知識はいくらでも貸してあげる。でもね、今までまともに歌ってこなかったそのおこちゃまボディで、プロの声楽レッスンに耐えられると思ってんの!?腹式呼吸に必要なインナーマッスルも、高音を支える横隔膜のコントロールも、今のあなたにはまーーーったく足りてないのよ!』
((うぐっ……そ、それは、これから死ぬ気で鍛えるしか……))
僕の苦しい言い訳など聞こえていないように、脳内の『私』はさらに鬼の形相でまくし立てる。
『ーーいいえ、絶対に耐え抜きなさい!私は前世で、あの憧れのオペラの舞台に立てずに死んだの!夢を叶えるチャンスが目の前にあるのよ!?股間のアレと引き換えに手に入れたこのチャンス、無駄にしたら夜な夜な化けて出てやるわ!脳内で黒ミサ開いて、じっくりこってり呪ってやるんだから!絶対合格しなさいよね!!?』
ヒエッ……と、思わず脳内で悲鳴を上げた。
『私』の執念が凄まじすぎる。
でも、彼女の言う通りだ。
僕たちはもう二人で一つ。
前世の彼女の無念を晴らすためにも。
そして、僕の第二の人生をこの世界で最高に輝かせるためにも。
「わかったよ。……やってやろうじゃないか」
もう後ろには引けない。
僕は天井を見上げ、新たな決意を胸に、拳を強く握りしめた。
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