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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
実家編

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取引成立


重苦しい沈黙が、広々とした執務室を支配する。

父上は組んだ指に顎を乗せ、射抜くような視線でじっと僕を睨みつけていた。

一秒が、まるで一時間にも感じられる緊迫感。


……やがて、父上の口元が不敵に歪んだ。


「面白い。絶望の淵にいながら、即座に自らの『傷』を武器に転じるとはな。その胆力、我が跡継ぎに相応しいものだったが、実に惜しいことをした。……まあよかろう、お前の策に乗ってやる」


パチンと父上が指を鳴らすと、音も無く執事が現れ、最高級の羊皮紙とインク、トラッド辺境伯の家紋が彫られた封蝋印をデスクに置いた。

父上が再びデスクに視線を落とし、僕専属の一流音楽教師の募集要項をしたためる間に、執事は上品な紅色のワックスを溶かしている。


「お前を『サントマリオ・ピエタ・カプアナ音楽院』の受験生として推薦してやろう。家庭教師も最高峰の男を手配する。だが、もし落ちたら——その時は容赦なく修道院送りだ。死に物狂いで掴み取ってみせよ」


厳しい条件。

だが、僕にとっては望むところだ。


「ーー御意。必ずや、ご期待以上の結果をお見せします」


僕は完璧な貴族の礼を取り、深く頭を下げてから執務室を後にした。

重厚な木製のドアを閉め、父上の視線から完全に外れた瞬間。

僕は小さく、ガッツポーズを決める。


((よしッ、交渉成立……! 学費と家庭教師、ゲットだぜ!))


現代日本なら人道的に絶対に許されない『去勢』。

だけどこの世界なら僕を文字通り『至高の歌姫』へと押し上げる、考え得る限り最高のプラットフォーム。


待ってろよ、SMPC。

前世で叶わなかった音楽の頂点、このMKTP(胸も股間もつるペタ)になった体で、絶対に極めてやるんだから!


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基本毎日更新です。

今後もよろしくお願いします!

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