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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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自由の国


着の身着のままで地獄の王都を脱出し、幾重もの険しい山境を越え――。

僕は命からがら、自由と芸術の国『フラネル共和国』の地へと辿り着いた。


((ハァ、ハァ……やっと、やっとここまで来られたね、『ミーナ』……))

『ええ。よく頑張ったわ、カース。ひとまずは安全圏よ。まずはここでミハイルと合流して、実家の安否も含めて情報を集めましょう!』


脳内の『私』の励ましを受け、僕は大親友であるミハイルが身を寄せているはずの場所へと向かった。

彼の親族が営む、格式高い『ポルネー子爵家』の地方邸だ。

まずは彼の生存確認。

そして、王都で起きたあのレオンの裏切りというあまりにも凄惨な現状を報告し、今後の協力を仰ぐためだ。

重厚な子爵邸の門を叩き、使用人に事情を説明して待つこと数分。

邸宅の奥から現れたミハイルは――いつも僕に向けてくれていた、あの太陽のように眩しい笑顔を一切浮かべていなかった。

それどころか、ボロボロになった僕の姿を視界に捉えた瞬間、その美しい表情をみるみるうちに恐怖と絶望で真っ青に染めていったのだ。


「カース……」

「ミハイル!よかった、無事だったんだね……っ!実は王都で――」


僕が安堵から彼に駆け寄ろうとした、その瞬間。

彼は僕の言葉を容赦なく遮り、酷く冷徹な、しかし恐怖に震えるような声で拒絶の言葉を言い放った。


「帰ってくれ。……今すぐ、僕の目の前から立ち去るんだ、カース」


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