新たなる旅立ち
僕はゆっくりと立ち上がり、泥と埃に汚れた外套と制服を払った。
そして、鉄格子の向こうに佇むレオンを、真っ直ぐに見据えて答える。
「……分かった。その提案、乗らせてもらうよ、レオン」
「ふっ、賢い選択だ。精々、泥水を啜って惨めに生き延びるんだね」
レオンが突き出すように手渡してきた『帝国発行の偽造通行証』をひったくるように受け取り、僕は暗闇に紛れて走り出した。
背後から聞こえる、かつての友の冷たい嘲笑を、耳の奥でシャットアウトする。
((待っていてください、母上。必ず、あなたを助けに戻って参ります……!父上、ジュリアス、そしてレオン……!君たちの思い通りに、この物語を終わらせたりなんかしない!))
『行くわよ、カース!立ち止まらないで!目指すは、あの人がいる国――』
脳内の『私』が、反撃へのルートを指し示す。
目指す旅路はただ一つ。
大親友ミハイルが避難している、自由と芸術の国『フラネル共和国』――。
実家に裏切られ、友に欺かれ、すべてを失って奈落の底へ突き落とされた少年。
だが、その胸に宿る前世の魂と、かつて世界を魅了した神の歌声は、まだ微塵も死んではいなかった。
激しく燃え盛る王都の夜空を背に、彼は呪われた運命をひっくり返すため、新天地へと力強く足を踏み出す――。
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