表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/237

悪魔の提案:無様な生か犬死か


レオンは腰に下げた鉄の鍵束を指先で弄びながら、憐れむように、そして冷ややかに僕を見下ろした。


「本来なら、売国奴の息子として、ここで無様に処刑される君を特等席から眺めるつもりだったけれど……。仮にもこの僕と日々競い合った君が、こんな薄汚い地下牢でひっそりと首を撥ねられるというのは、どうにも僕の美学プライドが許さない」


チャリ、と硬質な音が響き、重い鉄格子がわずかに隙間を作る。


「このままここで死んでもらっては、あまりに退屈だ。どうだい、逃がしてあげようか?――ただし、条件がある。国を捨て、プライドを捨て、尻尾を巻いて無様に地の果てまで逃げ延びるんだ。そして、二度と僕の前にその顔を見せないこと。それが君の生き残る唯一の術だ」


それは、完璧な敗北宣言を要求する、悪魔の提案だった。

ここで彼の施しを受けて逃げれば、僕は『実家と共に国を売って逃亡した最悪の大罪人』として、歴史に永遠にその汚名を刻まれることになる。


「くっ……!」


悔しさに血が滲むほど唇を噛み締める僕の頭の中に、これまでになく切迫した『私』の声が響き渡った。


『……カース、彼の提案に乗りなさい!悔しいし癪だけど、今はプライドなんて犬にでも食わせておきなさい!』

((でも、これじゃ本当に売国奴になってしまう……!母上の安全だってまだ確保できていないのに、僕だけ逃げるなんて――))


今度こそ『私』の助言に従うべきだ。

そう頭では理解しているが、どうしても母上の安否が気になり、なかなか踏ん切りがつかない。

焦る僕に『私』は冷酷な現実を突きつけた。


『いいえ、冷静になりなさい!今の無力なあなたじゃ、お母様を救うどころか、自分の命すら守れないわ!ここに留まって明日処刑されたら、それこそ全てが終わり(ゲームオーバー)よ!』


『私』は一呼吸置き、さらに言葉を重ねる。


『レオンの思惑は正直引っ掛かるわ……。何か別の、裏の狙いがあるのかもしれない。でも、このままここにいても何も変わらない。生きてさえいれば、劣勢をひっくり返すチャンスは必ず巡ってくる!泥水を啜ってでも亡命して、体勢を立て直しましょう!』


『私』の理路整然とした、しかし必死の言葉が、熱くなっていた僕の思考を急速に冷やしていく。

そうだ。

プライドを守って死ぬのは簡単だ。

だけど、死んでしまったら、ジュリアスの陰謀を暴くことも、敬愛する母上を救い出すことも、もう二度とできない。

今は、何がなんでも生き延びるんだ。

生きて、いつか必ず、全てを奪い返す——。

僕は泥にまみれる覚悟を決め、鉄格子の向こうにいる帝国の皇子を、まっすぐに見据えた。


少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると大変励みになります!

基本毎日更新です。

今後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ