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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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予想外の影


どれほどの時間が経っただろうか。

完全に陽の光が遮断された暗闇の中、僕の心はじわじわと恐怖に蝕まれていった。


((やっぱり……こんなところ、来なければよかったのかな……。『ミーナ』の言う通り、すべてを捨てて遠くへ逃げておけばよかったのか……?))


母上を救い出すことすら叶わない己の無力さ。

そんな絶望と後悔に押し潰されそうになりながら、深く膝を抱えて蹲っていた、その時だった。


コツ、コツ、コツ、コツ……。


不気味なほどに規則正しい足音。

周囲の見張りの衛兵たちは、眠らされているのか、それともすでに買収されているのか。

侵入者を咎める声は、ただの一言も聞こえてこない。

やがて、僕が囚われている鉄格子の前に、一人の人影が静かに佇んだ。

その人物は、深く被っていた外套のフードへとゆっくりと手をかけ、それを払いのける。

壁に掛けられたランプの微かな光に照らされたその美貌を見て、僕は思わず息を呑んだ。


「……君、は……っ!」

「ふん、随分と無様な姿だね、カース。僕が目を離した隙に、こんな薄汚い檻の中で勝手に捕まっているなんて……本当に心外だよ」


そこにいたのは、本国へ帰ったはずの我が好敵手ライバル

権天使プリンシパリティーズ』の一角――レオン・フォン・ローゼンだった。


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