最悪の報せ
届けられたあまりにも冷酷な緊急の軍事報。
それは、僕の心臓を一瞬で凍りつかせるに十分すぎる、おぞましい内容だった。
【最重要:緊急軍事速報】
北部防衛線、決壊。
トラッド辺境伯、帝国軍の侵入を全面手引きか。
「なっ……。父上が……我がトラッド家が、帝国軍を王国内に導き入れただって……!?」
頭の中が、一瞬で真っ白になった。
トラッド辺境伯領は、帝国が我が王国に侵攻する上で必ず通らなければならない、文字通り『北部の最重要拠点』だ。
そこが文字通り「どうぞお通りください」とばかりに無血で城門を開け、帝国の軍勢を王国の喉元へと引き入れたというのだ。
誰もがその大裏切りに慄く中、脳内の『私』が、恐ろしいパズルのピースをカチリとハメながら戦慄の声を上げた。
『……合点がいったわ。これで全部繋がった。ジュリアスよ!あのプライド肥大化した出来損ないの弟、あなたを暗殺しようとしてことごとく失敗し、あなたが国家規模のカリスマになっちゃったから、「もうこうなったら、国ごと兄を叩き潰してやる」って、実家を巻き込んで帝国と手を組んだのよ!!』
((そんな……!いくら僕が憎いからって、国を売るなんて……。そんな狂ったこと……っ!))
『あいつの病んだプライドはとっくの昔に限界突破してたのよ!自分が継ぐはずの伯爵家すら、帝国の高官という「さらに上の地位」と引き換えに差し出したに違いないわ。なんて歪んだシスコン――じゃなくて、ブラコンの極みなのよ……!』
実家の凄まじい裏切りにより、帝国軍の先遣隊はすでに王都の目と鼻の先にまで迫っている。
国を売った大罪人の身内――それも長男である僕がこのまま王都に留まれば、いずれ国王陛下から『逮捕状』が出される。
そして、王宮に捕まれば極刑は免れないだろう。
親友やライバルとの別れ、実家の恐るべき謀反。
四面楚歌、絶体絶命の戦火の中で。
僕は前世の記憶を思い出したあの瞬間以上の、人生最大の暴風雨に巻き込まれようとしていた――。
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