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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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引き裂かれる絆


「カース。僕は……親族を頼って、西の『フラネル共和国』へ避難することになった。……せっかく、これからだっていうのに。君と、もっと、もっと一緒に歌いたかったよ……!」


薄暗い寄宿舎の部屋で、ミハイルが悔しさと恐怖にその美しい瞳を歪め、僕の手を壊れそうなほど強く握りしめた。

家族の安全を考えれば、これ以上ない正しい選択だ。

僕は溢れそうになる涙をグッとこらえ、彼を安心させるように、ひときわ力強くその手を握り返した。


「大丈夫だよ、ミハイル。僕たちの紡いだ歌の絆は、国境なんて簡単に飛び越えるさ。約束だ、絶対に生きて、またこの王都で会おう。僕たちの三重奏テオリアを、もう一度一緒に歌うために……!」


そして――僕たちのもう一人のクラスメイト、レオン。

彼は、慌ただしく荷物をまとめる僕たちの前で、いつものツンとした傲慢な態度とは明らかに違う、ひどく冷徹で、しかし哀しげな笑みを浮かべて佇んでいた。


「フン……。僕は当然、祖国であるローデンブルク帝国へ戻るよ。カース、君との『切磋琢磨おままごと』は、まあ、それなりの退屈しのぎにはなった。だが、お遊びはここまでだ。次に僕たちが相まみえる時は――」


レオンはそこまで言いかけてフッと口を閉じると、それ以上は何も語らず、そのまま一度も振り返ることもなく音楽院を去っていった。

この時の僕はまだ。

彼が残した言葉の本当の意味を、そして、あまりにも最悪な形で彼と再会することになる未来を、露ほども知らなかった――。


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