謁見
王室と教会、両陣営による一触即発の睨み合いが、ついに限界を迎えた。
ある日の夕暮れ、僕たちの元に一枚の、ずしりと重い羊皮紙が届けられた。
そこに記されていたのは――国王陛下直々の名による『王宮への出頭命令』。
物々しい近衛兵の警備が敷かれた馬車に揺られ、僕たちは王都の象徴である大王宮へと連行される。
馬車に同乗するメンバーは、僕たちカストラートクラスの全員。
そして音楽院を代表し同行する学長と、今回の王命に最も激しく噛み付いた教会の枢機卿たち数名だ。
ちなみに、教会の最高権力者である教皇聖下は、
「神の敬虔なる下僕が、世俗の王ごときの呼び出しにいちいち応じる必要はない」と、最高に優雅な御言葉で出頭を全面拒否したため、この馬車にはいない。
強い。圧倒的にズルい。僕だってできることなら今すぐ逃げ出したいのに!
やがて、謁見の間の巨大な彫刻扉が、重々しい音を立てて左右に開かれた。
一歩足を踏み入れると、そこには中央の玉座に鎮座する国王陛下をはじめ、絢爛豪華な衣装を纏った王族や、威厳に満ちた国の重臣たちがズラリと居並び、僕たちを冷徹な視線で射抜いていた。
「――面を上げよ。お前たちが、我が王都の物流をマヒさせているという、噂の張本人たちか」
空間そのものを震わせるような、圧倒的な威圧感を孕んだ国王陛下の声が、大理石の床に響き渡る。
普通ならここで、蛇に睨まれた蛙のように恐怖で平伏し、ブルブルと震え出す場面だ。
けれど、僕の脳内では『私』が、この大舞台を前に最高にノリノリで、的確な指示を飛ばし始めていた。
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