脳内会議:特大スケールの場外乱闘
これには、さすがの僕も全身から冷や汗が止まらない。
((助けて『ミーナ』!前世の知識で何とかならないの!?学内の対立を綺麗に収めたと思ったら、今度は王室と教会の間に埋めようもない深すぎる溝ができちゃったんだけど!?スケールが大きすぎて、ただの伯爵令息の僕の手に負えないよぉ!!))
脳内の『私』に泣きつく僕。
だが、今回ばかりは『私』の反応も無慈悲なまでに頼りにならない。
『いや〜……。まさか自分のプロデュースしたアイドルグループのせいで、王室と教会が相互破門一歩手前の冷戦状態にまでなるとは、夢にも思わないじゃない?完っ全に想定外だったわ……』
僕に負けず劣らず、脳内の『私』も完全に引きつった笑いを浮かべている。
「……ねえ、カース。王宮の方角から、なんだかもの凄く不穏な、血の気の多い空気が漂ってきているんだけど……。まさか、僕たち処刑されたり、しないよね……?」
ミハイルが窓の外の王宮を遠巻きに見つめながら、震えている。
その脚は生まれたての小鹿のようにガクガクだ。
学長や教会が僕たちを『盾』にして王室を殴り始めたせいで、カストラートクラスは今や政治のど真ん中に引きずり出されようとしていた。
――この時。
僕をカストラートへと叩き落とした実家の弟・ジュリアスが、
「兄上を爆殺しようとしたら失敗し、なぜか兄上が国家と教会を揺るがす時代の寵児になって、王宮と枢機卿が連日大パニックになっているだと……。一体どういうことだ、僕の計画のどこにこんなバグが紛れ込んだ……!?」
と、自身の緻密で冷徹なシミュレーションが粉々に破壊され、自室で白目を剥いて卒倒しかけていることなど、今の僕たちには知る由もなかった。
僕たちの紡いだ歌声は誰にも止められない濁流となって、ついにこの国の歴史そのものを大きく動かし始めていたのだ――。
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