深刻なインフラ問題
「カース……大変なことになった。僕たちのコンサート、全面禁止だって……」
ある朝、ミハイルが今にも失神しそうなほど真っ青な顔をして、僕の部屋に飛び込んできた。
その震える手には、なんと金色に輝く国王の蝋印が押された、重々しい『王命公文書』が握られている。
「ええっ!?な、なんで!?違法なことは何もしていないし、あの学長が大喜びするくらい、お金だってちゃんと稼げているのに!」
パニックになる僕に、脳内の『私』が、あちゃーと片手で額を押さえながら、あまりにも残酷で、けれどぐうの音も出ない現実を突きつけてきた。
『……完全な盲点だったわ。カース、第4回の、あの中央大通りでのゲリラコンサートの時の様子を、よーーく思い出しなさい』
((え?確かにものすごい人集りだったよね。みんな、すごく楽しそうに僕たちの歌を聴いてくれて……))
僕もミハイルもクラスメイトたちも、とても楽しく歌えた。
石や野次を投げてくるアンチだって、僕の記憶ではいなかったはずだ。
『楽しそう、じゃないのよ!あの時、数万人の興奮した市民が大通りと、そこに繋がる王都の主要な街道に一斉に殺到したせいで――王都の物流と交通網が、半日以上も完全にマヒしたのよ!』
((え?あ……))
僕は『私』に詳しく説明されて、ようやくゲリラコンサートの致命的欠点を理解した。
『貴族の馬車は身動きが取れずに立ち往生、市場への食料流通はストップ、おまけに熱狂した群衆が押し寄せて将棋倒しの怪我人まで多数出た……。これね、現代日本やこの世界で言うところの「超重度の都市型インフラテロ」になっちゃってたのよ!』
そうなのだ。
神出鬼没な上に、僕たちの歌声が持つ『神聖性』は、集客力が異次元すぎた。
王都の治安を預かる衛兵隊からすれば、いつ、どこで発生するか予測不可能な、数万人規模の暴動を何度も鎮圧させられるようなもので、たまったものではなかったらしい。
結果、国家の安全とインフラの崩壊を防ぐため、王室から直々に『ゲリラコンサート全面禁止令』という最高刑クラスのストップがかかってしまったのだった——。
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