決死のプレゼン
父上の眉がピクリと跳ねた。
書類を捌く手が止まる。
行き場を失ったインクが滴り、デスクに黒い染みを作った。
長男である僕が、まさかここまで早く己の『価値の暴落』を受け入れ、自ら身を引くと言い出すとは思っていなかったのだろう。
むくりと顔を上げる父上。
ついに、氷のように冷徹なその眼光が、しかと僕を捉えた。
「ほう……。自覚があるのは重畳。だが、ならばお前はどうするつもりだ? 私は役立たずを無為に養うほどの寛容さは持ち合わせておらんぞ」
潔い態度は結構、だがしかし慈悲はなし。
品定めをするように凝視し、低く鋭い声で問いただす。
「もちろん、ただの居候になるつもりはありません。男性としての義務を果たせぬ以上、僕は別の方法で家門に貢献いたします」
僕は一歩前に出て、背筋をピンと伸ばした。
「ーーすなわち、『芸術の振興』をもって、この辺境伯家に比類なき名声をもたらしてみせます!」
「芸術だと?」
父上の顔が、怪訝そうに歪む。
武骨な辺境伯家の当主にとって、芸術などという言葉は、中央の腑抜けた貴族たちの道楽にしか聞こえないのだろう。
そんな父上に、僕は前世の知識と、この世界の情勢をすり合わせた『完璧なロジック』を叩きつけた。
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