いざ、冷血伯爵との対面
「父上、お話があります」
一命を取り留めてから数日。
僕はまだ下半身に走る鈍痛に耐えながら、辺境伯である父・ルドルフの執務室のドアを叩いていた。
豪奢なマホガニー製のデスクに座る父。
書類の山から一瞬投げ掛けられた視線は凍りつくほど冷ややかだった。
再び手元の書類に目を落とし、羽根ペンを止める気配すら見せない。
「……カースか。体の具合はどうだ。医者の診断は既に聞いているな?」
その口調には、死の淵から生還した息子への安堵など微塵もなかった。
そこにあるのは、『跡継ぎの資格を失った不良品』を如何に効率的に処分するか、という冷徹なまでのロジック思考。
この世界の貴族にとって、血統の存続こそがすべて。
前世の記憶とレディースメンタルを持つ、今の僕にはドン引きの冷たさだけど、好都合でもある。
泣いて同情を誘う必要なんてない。
ここはビジネスライクに、徹底的なギブ・アンド・テイクの交渉といこう。
僕は深く息を吸い、凛としたソプラノで切り出した。
さあこっちを見ろ。
「単刀直入に申し上げます。僕は次期当主の座を辞退し、弟に、ジュリアスに譲ります」
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