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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
学院編

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58/233

ジレンマ


定期的な開催となれば、当然『いつ、どこでやるか』をあらかじめ広く世間に告知して、客を効率よく集めるのがエンタメの常道テンプレだ。

だけど、今の僕たちの背後には、僕の命を執拗に付け狙うジュリアスという、本物の脅威が牙を剥いている。

大切なカストラートの仲間たちを守りたいのは勿論のこと、せっかく味方に引き入れたばかりの楽器科の生徒たちを危険に晒して、再度の離反や対立を招くことだけは絶対に避けなくてはならない。


【ステージ選定における絶望的な二重苦ジレンマ

固定ステージの致命的リスク:

毎回同じ大聖堂や広場で大々的に開催すれば、刺客にとってはこれ以上ない『事前の爆弾設置や暗殺計画が容易な絶好の標的』になってしまう。


圧倒的な警備費用の不足:

学長に掛け合って予算の分配こそ変えさせたものの、コンサートの売り上げが出る前の今、僕たちの財布は深刻な軍資金不足。

ステージの周囲や死角を完璧にカバーできる腕利きの私兵や衛兵を雇う余裕なんて、1リラたりともありはしない。



「うーん……。富裕層が大人数集まる場所じゃないと、肝心のチップは稼げない。でも、人を集めるために日時と場所を事前告知すると、刺客にとってはこれ以上なく狩りやすい獲物。まさにカモだ……。完全に詰んでるね、これ……」


僕とミハイルがデスクの前でがっつりと腕を組み、うむむと唸っていると。

脳内の『私』が、ニヤリと何かとんでもない悪巧みでも思いついたかのような、不敵な声音で囁いた。


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