脳内会議:音大生の現代的アプローチ
学長が、デスクに差し出された緻密な収支シミュレーションの書類を、文字通り食い入るように見つめる。その濁った瞳の奥は、完全に『莫大な金の計算』を始めていた。
『ふふん、現代日本のアイドルビジネスや、オーケストラの定期演奏会のノウハウを舐めないことね!パトロンからの気まぐれな定期支援だけに頼るから予算が硬直するのよ。自分たちの歌声と顔の良さで、直接市場からドバドバお金を回すシステムを作ってしまえば、誰も文句は言えないわ!』
((さっすが『ミーナ』!本当に頼りになるなぁ。これならあの強欲な学長だって、首を縦に振るしかないよね!))
完全な勝ちを確信した僕は、内心で有頂天になりながら、つい脳内で馴れ馴れしく『私』を愛称で呼んだ。
『そうでしょうとも!異世界転生(?)チート舐めんなっての!』
脳内の『私』も、褒められて満更でもなさそうに胸を張る。
「……ほぅ。月一回の定期公演、か。確かに、先日の爆破事件に対する世間の同情も手伝って、今このタイミングでカストラートの特別ステージを企画すれば、王都中の貴族たちがこぞって高額なチケットに飛びつくだろうな。しかも、『生徒に実戦経験を積ませる』という完璧な大義名分があれば、頭の固い保守的な教師陣の反対も容易に押し切れる……」
学長が、その顔にねっとりとした欲望の笑みを浮かべ、僕を見上げてきた。
「面白い。これならカストラートクラスの予算を維持――いや、むしろこれまで以上の資金を市場から稼ぎ出せるかもしれん。よかろう、カース君。君の提案通り、楽器科への予算平等分配を認めよう。その代わり、この定期コンサート、絶対に成功させたまえよ?もし大赤字を出したら……その時は分かっているね?」
「もちろんです。『我が校の』輝かしい未来がかかっていますから」
僕は貴族令息としての完璧な一礼を決め、満足げに鼻を鳴らす学長を残し退室した。
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