逆転のマネジメント
先日の爆破事件が残した生々しい爪痕は、直接被害に遭った僕たちカストラートクラスや、上層部への釈明や資金繰りに頭を抱える経営陣だけにとどまらなかった。
実は、当の楽器科の生徒たちの間にも、それ以上に強い衝撃と激しい動揺が走っていたのだ。
「まさか、あいつらが本当にそんな恐ろしいことをしでかすなんて……」
「いくらカストラートばかりが優遇されて気に入らないからって、同じ音楽を志す仲間の夢や命まで奪っていいはずがないだろう……!」
当然といえば当然だった。
ほとんどの楽器科の生徒は、僕たちのことを「金食い虫の温室育ち」として疎ましく思い、陰口を叩いて憂さ晴らしをしてはいたけれど、幸いなことにそこまでの明確な殺意や、凶行に及ぶほどの狂気までは抱いていなかったのだ。
捕まった4人の常軌を逸した暴挙は、まともな倫理観を持つ普通の貴族令息である彼らを心底ドン引きさせ、学内には俄かに『カストラート同情論』さえ巻き起こり始めていた。
『――今だわ、カース。「鉄は熱いうちに打て」よ! 楽器科の連中が罪悪感と困惑に揺れている今この瞬間こそ、彼らをこちらの陣営に引き込む最大のチャンスよ!』
脳内の『私』が、好機を逃さぬよう鋭く告げる。
僕たちが仕掛けるターゲットは、単なる『声楽科の権利主張』なんかじゃない。
この音楽院の一員として、全ての学生に平等な教育環境を求めること。
――すなわち、楽器科の反発の根源である搾取構造、『資金の不平等分配』の是正をあの強欲な学長に力尽くで認めさせることだ。
これが成功すれば、楽器科の生徒たちは僕たちのことを、自分たちの予算を搾取する『敵』ではなく、自分たちの正当な権利を勝ち取ってくれた『英雄』として見るようになる。
ジュリアスが次に仕掛けてくるかもしれない、学内の不満分子を利用した離間工作を、その根底から完全に封じ込めることができるのだ。
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