崩れ去る信頼
「う、嘘……だろ……?」
ぽつりと漏れた僕の声は、情けないほどに震えていた。
脳内の『私』が突きつけてきた、あまりにも不穏で、冷酷な仮説。
最初は「そんなことあり得ない」、「僕の可愛い弟がそんな恐ろしい真似をするわけがない」と全力で否定したかった。
拒絶したかった。
だけど、一度脳裏に芽生えてしまった疑惑は、過去の不自然な出来事を次々と、恐ろしいほどの整合性を持って一本の線へと繋ぎ合わせていく。
あの賢く大人しい、主人によく従う名馬が、突如狂ったように僕の股間を蹴り上げたこと。
僕が一命を取り留め、「家督を辞退する」と言った時の、ジュリアスのあの妙に探るような、値踏みするような濁った目。
そして、僕がカストラートとして音楽院に特待生合格し、実家に凱旋した際に彼が浮かべた、単なる悔しさの域を遥かに超えた、あの『般若のような怒りの形相』。
極めつけは、今回捕まった楽器科の4人が、消えた『もう一人の影』に怯え、退学処分すら恐れずに頑なに口を割ろうとしないこと。
((……全部。全部、綺麗に繋がっちゃうじゃないか……))
認めざるを得なかった。
僕をこの『カストラート』という数奇な運命へ叩き落とし、さらに王都の爆煙の中で殺そうとした真の黒幕。
それは、僕がずっと『優秀で少し生意気な、自慢の可愛い弟』だと信じ込んでいた、ジュリアスその人だったのだ。
実の家族から向けられていた底なしの殺意と、あまりの衝撃に、僕は自分の両腕をきつく抱きしめて、ただガタガタと震え続けることしかできなかった。
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