電撃の持ち物検査
『先生方に協力を仰ぎましょう。これ以上、カストラートクラスの生徒が学院を去れば、世界中のパトロンからの巨額の投資金も芋づる式に引き揚げられる……。そう脅してやれば、あの腰の重い教師どもだって、我が身と財布の可愛さに動かざるを得ないわ!』
相変わらず悪魔的かつ合理的な『私』のアドバイスに従い、僕とミハイルは動いた。
僕たちの持つ、楽器科生徒にも劣らない貴族家の威光と、被害者という最強のポジションを最大限に利用して、まずは一部の有力な教員を外堀から抱き込む。
さらにダメ押しとばかりに、声楽科の首席と次席が揃って教員室に出向き、「事件が恐ろしくてレッスンに全く集中できません……」「僕たちも実家に帰らせていただくしかないのでしょうか……」と、儚げに涙を浮かべて懇願してみせたのだ。
はたして——効果は抜群だった。
音楽院の『二大最高級ブランド商品』に泣きつかれた教師たちの顔色は一瞬で変わり、そこからの動きは早かった。
翌日には、全校生徒に向けて『学内での貴重品紛失に伴う、緊急一斉持ち物検査』という名目の、事実上の容赦なき『ガサ入れ』が決行された。
結果は、すぐに。
そして拍子抜けするほど、あまりにも呆気なく出た。
「おい、ふざけるな! どうして俺のクローゼットを勝手に開けるんだ!」
「やめろ! 触るな! 泥棒猫め!」
教室内で必死に騒ぎ立てる生徒たちのカバンやクローゼットから、現場で見つかったものと完全に同ロットの『軍用火薬の包み紙』や、なぜか片方だけ蝶番の壊れた高級ヴァイオリンケースが、次々と白日の下に晒されていったのだ。
その場で拘束されたのは4人。
弦楽科から2人、管楽科から1人、鍵盤楽科から1人。
全員が、日頃からカストラートクラスへの手厚い待遇に激しい嫉妬と不満を漏らしていた、お高くとまった上位貴族の凡才たちだった。
「これでチェックメイトだ。お前たちの犯行だな!」
現場に立ち会ったミハイルが、氷のように冷たい声で鋭く言い放つ。
決定的な証拠を突きつけられた4人の実行犯たちは、みるみるうちに血の気を失って真っ青になり、その場にガタガタと崩れ落ちた。
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