鎮魂歌
事件の被害は、あまりにも甚大だった。
死者3名。
爆発の直撃を受け、音楽家としての未来どころか、その若く尊い命までも理不尽に奪われた少年たち。
さらに、鼓膜の完全な損傷や失明により、音楽家として再起不能となった重傷者が7名。
その他、僕やミハイルのような中軽傷を負った生徒は、クラスのほぼ全員にのぼった。
けれど、何よりも深刻だったのは、目に見えない『心の傷』だった。
無惨にも一瞬にして夢を、そして五感を奪われた仲間たち。
そして、自分たちに向けられた壮絶な悪意と狂気に完全に心を折られ、怯え、泣きながら荷物をまとめる生存者たち……。
事件から数日もしないうちに、カストラートクラスの実に3割もの生徒が、夜逃げ同然にこの音楽院を去っていった。
「……みんな、あんなに毎日、血を吐くような思いで必死に練習していたのに……。なんで、こんな目に遭わなきゃいけないんだ……ッ!」
主を失い、がらんとしてしまった寄宿舎の部屋で、ミハイルがぽつりと、けれど絞り出すように呟いた。
彼の瞳は激しい悔しさと深い悲しみで歪み、今にも堰を切って零れ落ちそうなほど、大粒の涙がたまっている。
重苦しい空気の満ちる音楽院の大ホールでは、去りゆく仲間たちを送り出すための『別れの歌』が、皮肉なほど美しく、そしてどこまでも哀しく響き渡っていた——。
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