犯人は誰だ
混乱し、悲鳴を上げて逃げ惑う広場の群衆。
その地獄絵図のような人混みの中に、僕は『それ』を見てしまった。
避難する人々の流れに逆らい、悠然とその場に留まる、いくつかの不審な影。
ローブのフードを深く被った彼らの表情は、暗がりに沈んで窺えない。
ただ、僅かに覗く口元だけが、血に飢えた獣のような、下卑た歓喜の笑みを浮かべて歪んでいる。
あまりの異常さに身動きもできず凝視していると、こちらの視線に気付いたのか、リーダー格らしき人影が不意に背を向け、闇に紛れて立ち去ろうとする。
その瞬間、夜風に翻ったマントの隙間。
彼らの手には、この惨劇の場にはおよそ似つかわしくない、優美な曲線を描く木製の大きな箱が、まるで宝物のように大切そうに抱えられていた。
((……あれは、楽器ケース……! まさか、楽器科の……!?))
日頃からカストラートクラスへの憎悪と蔑みを募らせていた、楽器科の貴族生徒たち。
これは歪な待遇格差への逆恨みの犯行なのか――?
聖なる音楽祭の夜は、哀れな少年たちの血と鼻を突く硝煙、そして底知れぬ疑惑という、最悪の不協和音に染まっていくのだった。
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