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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
学院編

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39/234

犯人は誰だ


混乱し、悲鳴を上げて逃げ惑う広場の群衆。

その地獄絵図のような人混みの中に、僕は『それ』を見てしまった。

避難する人々の流れに逆らい、悠然とその場に留まる、いくつかの不審な影。

ローブのフードを深く被った彼らの表情は、暗がりに沈んで窺えない。

ただ、僅かに覗く口元だけが、血に飢えた獣のような、下卑た歓喜の笑みを浮かべて歪んでいる。

あまりの異常さに身動きもできず凝視していると、こちらの視線に気付いたのか、リーダー格らしき人影が不意に背を向け、闇に紛れて立ち去ろうとする。

その瞬間、夜風に翻ったマントの隙間。

彼らの手には、この惨劇の場にはおよそ似つかわしくない、優美な曲線を描く木製の大きな箱が、まるで宝物のように大切そうに抱えられていた。


((……あれは、楽器ケース……! まさか、楽器科の……!?))


日頃からカストラートクラスへの憎悪と蔑みを募らせていた、楽器科の貴族生徒たち。

これは歪な待遇格差への逆恨みの犯行なのか――?

聖なる音楽祭の夜は、哀れな少年たちの血と鼻を突く硝煙、そして底知れぬ疑惑という、最悪の不協和音に染まっていくのだった。


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