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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
学院編

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直談判と大人の台所事情


「……なるほど、学長。つまり、楽器科の生徒の実家が納めている高額な『支援金』や『寄育費』までもが、彼ら自身の環境改善ではなく、僕たちカストラートクラスの育成費に回されている、ということですね?」


「おやおや、カース君。耳が良いのは歌の時だけにしておくれ」


このままギスギスした空気を放置しておけば、いずれ大爆発を起こす。

そう危機感を抱いた僕は、放課後、ついに音楽院のトップである学長への直談判を敢行していた。

「首席特待生が直談判とは何事か」と周囲の職員には驚かれたけれど、さすがは狸の学長、僕を快く総長室へと迎え入れてくれた。

そして彼は今……。

重厚なマホガニーのデスクの向こうで恰幅の良い身体を揺らし、「なんだそんなことか」とでも言うように、困ったような、それでいて食えない笑みを浮かべている。

入学から八ヶ月、声楽科と楽器科の対立は冷戦状態からじわじわと実力行使の小競り合いへと発展しつつあった。

人気の高い練習室の割り当てを巡る泥沼の奪い合いや、廊下ですれ違いざまに喰らうあからさまな肩透かし。

あまりにも陰湿で不毛な泥仕合の原因を根本から突き詰めるべく、前世の『女子大生としてのリサーチ力』と、今世の『辺境伯家の情報網』をフル活用して学校の財務状況の裏取りをしてみれば……。


出るわ出るわ、大人たちの凄まじい黒い事情が——。


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