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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
学院編

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残酷な階級差


前世の『私』の知識――すなわち、現代日本の常識では、音楽とは誰もが平等に、地続きで楽しめる自由なものだった。

けれど、この世界の音楽院では事情が全く違っていた。

専攻する楽科によって、そこには残酷なまでに明確な『階級の壁』が立ちはだかっていたのだ。


【楽器科(弦楽・管楽・鍵盤楽)】

主な出身:高貴な貴族、または大富豪の商人の子息。

その理由:一流の職人が数年もの歳月をかけて仕立て上げるヴァイオリンやフルート、あるいは特注の大型チェンバロなど、天文学的な金額の楽器を購入し、維持できるのは、一握りの特権階級だけだから。


【声楽科】

主な出身:ほぼ100%が平民階級。

その理由:唯一必要なのが「自分の身体」というタダの道具だから。貧しい家庭の子供が、一攫千金を夢見て、その身一つで門を叩く。


ーーそして、僕とミハイルが所属する『カストラートクラス』。

ここは声楽科の中でも、さらに異質で特殊な隔離病棟クラスだった。

このクラスで貴族出身なのは、辺境伯家の僕と、子爵家のミハイルの二人だけ。

あとの同期は、見渡す限り全員が平民の少年たちだ。

それも、ただの平民ではない。

貧しい家庭の口減らしのために、幼くして親に売られ、強制的にその『人為的処置』を施されたような――暗く悲しい境遇を背負わされた少年たちが、その大半を占めていたのである――。


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