運命の部屋割り
式典が終わり、いよいよ新入生たちが最も緊張する『寄宿舎の部屋割り発表』だ。
掲示板の前に大きな人だかりができる中、僕は人混みをすり抜けて自分の名前を探す。
特待生に与えられるのは、最上級クラスの贅沢な2人部屋。
これから十年間、苦楽を共にする僕のルームメイトになるのは――。
「『カース・ディ・トラッド』……君が、僕の同室か」
背後から、少し硬い、けれど鈴を転がしたように涼やかな声が掛けられた。
振り返ると、そこに佇んでいたのは、いかにも育ちの良さそうな、凛とした気品を纏う黒髪の少年だった。
スラリと背の高い彼は、僕より一つか二つほど年上だろうか。
どこか悔しさを滲ませながらも、その瞳には強い意志の光が宿っていた。
「僕はミハイル・ド・ポルネー。ポルネー子爵家の次男だ。……そして、今回の試験の『次席合格者』だよ」
「あ、ミハイル君! 僕はカース、これからよろしくね」
僕がいつもの調子で笑顔で手を差し出すと、ミハイル君は一瞬驚いたように目を見張った。
僕がいつもの調子で笑顔を浮かべ、手を差し出すと、ミハイル君は一瞬だけ驚いたように丸く目を見張った。
どうやら僕のことを、もっとプライドの塊のような、鼻持ちならない名門辺境伯家の傲慢なお坊ちゃんだと予想していたらしい。
「……正直に言うよ。あの日、一般試験に乱入してきた君の歌声を聴いた時、僕は生まれて初めて自分の才能に絶望したんだ。上には上がいる、それもとんでもない圧倒的な『化け物』が、ってね」
「え、ええ!? 化け物だなんて、そんな……」
ちょっと待ってほしい。
たしかに僕は『私』の知識とこの身体(MKTPボディ)で、ちょっと常識外れな歌唱力を手に入れたけれど。
でも、断じて化け物ではない。
どちらかといえば、天使だ。
『いや、驚異的だって意味でしょ。褒め言葉よ』
僕が軽くショックを受けていると、脳内の『私』からすかさず呆れたようなツッコミが飛んでくる。
目の前のライバル候補が、脳内で一人漫才を繰り広げているなどとは露知らず。
ミハイル君はぐっと距離を詰めて僕に熱い視線をぶつけ、
「でも、僕は諦めない。この学校にいる十年間、君の背中を泥臭く追い続ける。同室になったからには、毎日君の生活習慣から喉のケア、発声法に至るまで、すべての技術を盗ませてもらうからね!」
真正面から、高らかにライバル宣言をするのだった。
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