王都への再出発
父上の長い小言と母上の温かい涙、そしてジュリアスの底冷えするような視線を後に残し、僕は再び王都行きの馬車に揺られていた。
今度はただの受験じゃない。
本当の『入学』のための、輝かしい旅立ちだ。
窓の外を流れる景色は、我が領地特有の鬱蒼とした森林地帯から、点在する小さな村々へと移り変わっていく。
のどかな田園風景を眺めながら、僕の胸はこれからの新生活への期待でパンパンに膨らんでいた。
((どんな子たちが大陸中から集まってくるんだろう。やっぱりみんな、幼少期から音楽の英才教育を受けてきたプライドの高い貴族家のお坊ちゃんばかりなのかなぁ……。あ、でも、最上級寄宿舎とはいえ入学直後は同室になる可能性もあるんだっけ?上手く仲良くなれるといいんだけど……))
僕にとって、外出といえばたまのお忍びくらいで、それすら今までの人生で数えるほどしかなかった。
そしてその度に、同年代の子どもたちが楽しそうに連れ立って市街を駆け抜ける姿を見ては、「いいなぁ」と密かに羨ましく思ったものだ。
もっとも、その子たちもただ遊んでいたわけではなく、実際は親の仕事の手伝いや御遣いの真っ最中だったわけだが。
世間知らずの辺境伯令息としては、どうしても「みんなで仲良く楽しい、キラキラ学園生活を!」なんて、ゆるふわな妄想が捗ってしまうのだ。
だがその時――僕の脳内お花畑を、現実主義な『私』の容赦ないムチがピシャリと叩き割った。
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