完璧なる調律
じっとりとした黒煙が立ち込める中、僕と闇医者が遮蔽壁の影からゆっくりと姿を現した。
視界を遮る煙の向こう側――そこには、僕の理想を寸分違わず具現化した、この世で最も美しい『極上の芸術品』が転がっていた。
木箱の火薬は――完璧に、これ以上ないほどその役目を果たしていた。
鉄の椅子に固定されたジュリアスの衣服は無残に焼き切れ、剥き出しになった肉体は、黒く炭化した皮膚と裂傷が入り混じった凄惨な【全身大火傷】を負っている。
爆風の破片を至近距離で浴びた両目は容赦なく破壊されて永遠の【失明】を迎え、その耳は、鼓膜を直撃した狂気的な爆音によって【鼓膜破壊】も完了していた。
それほどの破壊でありながら。
これほどまでに凄まじい衝撃を受けながらも、ジュリアスの胸はまだ浅く、しかし確実に上下している。
あの爆発の至近距離にありながら、即死を完全に回避させ、激痛の闇の中で限界まで生き永らえさせるという、絶妙極まる威力調整。
「クク……クハハハハ!見事、見事ですな!我が調剤に狂いはなし!これぞ極限の命の調律だ!!」
闇医者が狂ったように拍手喝采を送る。
ドクター・ピオが施した計算は、まさに悪魔の神業と言うほかなかった。
「……あ、あ、が、……あ、ぁ、……ッ…………」
目も見えず、耳も聞こえず。
ただ、全身を絶え間なく焼かれる激痛の暗闇の中で、ジュリアスは顎をがくがくと震わせ、声にならない絶望の泡を口から吐き出している。
自分が今どうなっているのかすら、確かめる術はあいつにはもう残されていない。
かつて、あの夏の夜の爆発事件で犠牲になった僕のクラスメイトたちが味わった地獄。
それを、すべての元凶であるこの男は今、さらに何倍にも濃縮した最悪の形で追体験しているのだ。
『素晴らしいわ、カース!本当に完璧な楽章だわ!あの時のあの子たちの叫びが、今、この男の絶望として昇華されているのよ……!』
脳内では『私』が、狂喜乱舞しながら僕の復讐劇を称賛していた。
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