終幕の譜面
僕はどこまでも冷徹な目で、これからの最終プログラムを脳内で確定させた。
まずは、ジュリアスの目の前で爆発物を炸裂させる。
生ぬるい火傷で済ませるつもりはない。
皮膚が炭化し、肉が爆ぜるほどの【大火傷】。
そして、爆風の破片であいつの視界を永久に奪う【失明】を負わせる。
さらに、凄まじい爆音によって二度と美しい音楽を聴くことができないよう【鼓膜破壊】を施す。
あいつが何不自由なく誇っていた、五体満足の身体。
その五感のすべてを、あの夏の夜、何も知らずに散っていったクラスメイトたちと同じように、爆炎の中で完全に消し去ってやるのだ。
そして――。
目も見えず、耳も聞こえず、ただ激痛の闇の中で藻掻き苦しむだけの存在になったジュリアスに、本当の最期を与える。
それは、帝都での調印式の日、あいつの手によって無残に奪われた僕の最愛の母上、エルザと全く同じポーズであるべきだ――。
((最期を飾るのは、【頚椎骨折】だ。僕の手であいつの首を掴み、あの時お母様が味わった絶望と全く同じ角度で、首をへし折って、この長い復讐劇の幕を閉じるんだ……))
『無念も怨みも、全てを焼き尽くすに足る最高のフィナーレが完成したのね、カース。これ以上ない、完璧な譜面だわ……!』
脳内で『私』が、極上のオペラでも観たかのように、うっとりとした熱い吐息のような声を漏らした。
「……さあ、ドクター。ジュリアスの体力を限界まで回復させるんだ。特大の爆薬を用意して、地獄の特等席へ案内して差し上げろ」
「ククク……仰せのままに、我が主様。極上の演出に耐えられるよう、この男の命の灯火を最大限にまで繋ぎ止めてみせましょう」
ドクター・ピオが邪悪な笑みを浮かべ、最後の仕上げのための調剤を始めた。
カチャカチャと、死の秒読みのような音が地下牢に響き渡る。
僕の瞳の奥に宿る純黒の炎は、いまや最高潮に達していた。
実の弟を本当の『無』へと還すため、僕は最も美しく、最も悍ましい最終楽章のタクトを、いま、静かに振り下ろそうとしていた。
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