溺れる真実
次なる演目は、肉体に傷を一切残さずに、精神だけを極限まで破壊し尽くす【水責め】だった。
((ジュリアス、お前の大好きなその綺麗なお顔と身体には、これ以上傷は増やさないでおいてあげるよ。だから、しっかりと五感のすべてを使って、この終わらない恐怖を味わってくれよ?))
傾斜した木製の拷問台に、手足を鉄枷で固定されたジュリアスが仰向けに寝かされる。
もはや指一本すら身動きが取れない強固な拘束。
その状態のまま、ジュリアスの顔面に、白く薄い布が何重にも容赦なく被せられた。
視界を遮られ、ジュリアスの呼吸が目に見えて激しくなる。
「いやだ、何をする……!頼む、カース、兄上……ッ!!悪かった、私が悪かったから!!」
「静かに。そんなに大声を出すと、余計に苦しくなるよ、ジュリアス」
僕が傍らの私兵に顎で冷酷に指示を出すと、ガラスの水差しが傾けられ、その顔面の布の上へと容赦なく水が注ぎ込まれた。
ドボドボと冷たい音が地下牢に響く。
瞬時に水分を吸った布が重くなり、ジュリアスの鼻と口にぴったりと張り付いて、その気道を完全に塞いだ。
「ゴボッ……!?ガ、ゴボォッ……!!」
ジュリアスは、本当に底なしの深い海へと突き落とされたかのように、ゴボゴボと虚しく存在しない空気を求め、拷問台をガタガタと激しく鳴らして藻掻き苦しんだ。
肺が酸素を求めて悲鳴を上げ、全身の筋肉が恐怖で引き攣る。
「はぁっ、がはっ!」
水が止まり、布がわずかに浮いた瞬間に必死に息を吸い込もうとするが、容赦なく次の水が注がれた。
「――っ、ゴホッ!ゴボォッ!う、うううッ!」
脳にダイレクトに叩き込まれる、絶対的な『死の恐怖』。
けれど、ジュリアスのすぐ傍らには呪われた天才医ドクター・ピオが脈を測りながら控えているため、どれだけ溺れようとも、決して死なせてはもらえない。
生と死の境界線で何度も溺死を擬似体験させられる、究極の生殺しの地獄だ。
『うわぁ……。外傷がない分、自分が今どこにいるかも分からなくなって、ただ永遠に溺れ続ける幻覚を見るのよね。精神を折るにはこれ以上ない極上のメニューだわ……』
脳内では『私』が、身震いしながらも目を逸らせず、その光景に見入っている。
((ああ、たっぷり味わうといい。お前が僕たちを追い詰めた絶望は、こんな生ぬるいものではなかったのだから))
僕は、拷問台の上で、浜辺に打ち揚げられた魚のように悶え跳ね、惨めに水と涙を撒き散らす弟の姿を、ただ冷徹な瞳で見つめ続けるのだった。
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